旋律が来ることは稀で、支える役割ばっかり、地味だと思われがちな低音楽器ですが、でも、それがないと音楽が破綻してしまうほどの影響力がある楽器でもあります。
私見ですが、旋律がなくても音楽を想像させることはできますが、ベースがない場合はそもそも音楽にならない。
そう思っております。
そんな、普段は地味だと思われがちな低音楽器についての記事を書いてみようと思います。
本記事は、どちらかというと「書法」にフォーカスしたものが多いのですが、ただ、演奏するときにおいても、どういう意図で書かれたかを考えるのは、大いに役にたつと思われます。
魅力的で個性豊かな吹奏楽の低音楽器の世界をほんのすこしだけご紹介させていただきます。
「吹奏楽の低音楽器とは?チューバ・コントラバス・バスクラリネットの役割を解説
低音楽器とは?
こんな記事を書いておきながら否定するようですが、低音楽器という概念はそもそもないのかもしれません。
この記事では低音楽器を、「低音を出せる」、もう少し発展させて、「音楽におけるベースラインを担当することが多い楽器」と定義したいと思います。
この定義によって、吹奏楽において、どの楽器が該当するのかは少しイメージしやすくなるのではないでしょうか。
ただし、低音が出る、ベースラインを担当することが多い楽器は、「ベースラインしか演奏できない楽器ではない」のです。
低音楽器とはいっても、
- ベースラインを支えるのが得意な楽器
- 中低音の音色を補うのが得意な楽器
- 音楽の方向性を決める楽器
こういった得意分野の違うものが混在しています。
要は、この楽器はベース担当と決めつけてある一部の役割のみさせたり、楽器群で音色の要素を気にせずに書くのは非常にもったいないということです。
簡単ではありますが、各楽器のキャラクターを少し述べたいと思います。
木管楽器の低音楽器
吹奏楽でよく使われる木管の低音楽器に、ファゴット、バスクラリネット、バリトンサックスがあると思います。
もちろん、コントラファゴット、コントラアルト、コントラバスクラリネットやバスサックスが入ることもあるとは思いますが、ただ、主たるものとしてはこの3つがあげられるのかなと思います。
この3つの楽器は、実はバス専用の楽器ではないという点は押さえておくべきかと思います。
オーケストラの作品を聞けばファゴットはバスを担当することもあるし、中音域の魅力的なソロがあることもあります。バスクラもバリサクも同様です。
この楽器群はバスの機能のみを担当させてしまうのは少しもったいないかなと思います。
中低音域の音色要素の可能性として活用するのがよいのではないでしょうか。
ファゴット
この楽器は、吹奏楽編成においては有効活用されている場面は非常に限られる印象です。
すべては、音量の問題です。
この記事で取り上げる3つの木管低音楽器で一番音量の面で不利だと言えると思います。
ただし、オーボエと同じくダブルリードであるというのは特筆すべき点かと思います。
この楽器があることで、オーボエとともに幅広い音域での音色の要素を増やすことができると思っています。
また、低音に関しては思いのほか強い点も挙げられるかと思います。
要は、金管楽器と音量で張り合う以外のところに役割があるということです。
ファゴットはかなり音域の広い楽器ではありますが、ユーフォニアムと被るような音域において、とても魅力的な音色要素を提供できる楽器だと思っています。
楽曲中で、常に音量が必要なわけではないですよね。
バスクラリネット
少し乱暴な言い方をすると、ファゴットとバリトンサックスの間の属性を持っているような楽器といえるのではないかと思います。
ファゴットは十分に木管を支えられる低音を担当できますが、バスクラリネットはそれよりももっとふくよかで十分な音量を持つ楽器です。
また、バリトンサックスよりは控えめな音量と音色で、金管に張り合うような存在にはなれませんが、間を取り持つ接着剤のような存在としては非常に存在感のある楽器だと思っています。
なお、クラリネット族の特性を生かしたごく小さい音を担当できるのも特筆すべきかと思います。
木管楽器群を一本でしっかり支えられ、金管楽器との橋渡しもできる優等生的なイメージの楽器です。
バリトンサックス
バリトンというのは、人間の声の声部の一部だったりします。テナーとバスの間の音域。バリトンは本来はベースではない。それはただしいかもしれません。
ユーフォニアムと同じ管長の似た形状の金管楽器がバリトンといわれるのはそれに近いかも。
ただ、サックス4重奏で考えたときに、バリトンサックスは紛れもないベースであると思います。
チェロもコントラバスがない場合においては、明確なバスです。
バリトンサックスがどういう楽器なのかといわれると、バスの役割を担うことができる、中低音楽器ということができるかと思います。
サックスという楽器は、木管楽器にも関わらず、非常に音量がでます。
それがいいというわけではありませんが、小さな編成においては、チューバがいない場合に単独でバスを担当しうるポテンシャルを持っているという点は、特筆すべきかと思います。
脱線ですが、高校一年時の吹奏楽部にはチューバがいませんでしたが、バリトンサックスの力が偉大であるということは十分に身をもって経験することができました。
一点、補足するとチューバの低音域をすべてカバーできるほど低音が出るわけではないという点は押さえておくべきでしょうか。
ファゴットよりも音域が狭くなります。
バリトンサックスを簡単に言うと派手さ抜群で、中低音楽器もこなせるし、単独でのバスもこなせてしまう。それがバリトンサックスと言えるのではないでしょうか。
金管楽器の低音楽器
金管楽器で低音を演奏しうる楽器は実は割とあります。
トロンボーン(特にバス)やユーフォニアムはバスの音域も演奏可能ですし、ホルンも演奏自体は可能です。オーケストラ作品では音色要素の面からベースを担当させられることもあります。
ただし、バストロンボーンは準じる役割を与えられることはあるとは思いますが…一般的な役割で考えた場合はチューバに限定するのがよいかと思います。
逆に言ってしまうと、吹奏楽においてチューバというのはなくてはならない唯一のベース楽器としての立ち位置を確立しているとも思われます。
チューバ
吹奏楽における絶対的な安定感のあるベースラインを提供できる楽器といえると思います。
現に、チューバがあるだけで最低限のベースラインを十分に確保できる楽曲は驚くほどに多いものです。
それだけ大事な楽器ではあるのですが、多用されがちであり、低音はチューバの色に染まりがちです。
「常時配置」すると音楽が単調化しやすい側面は否定できないと思います。
この点を逆手にとって、ピンポイントで「抜く」と効果的な側面があると思います。
たとえば、以下のような使い分けをすると驚くほど音響に差がだせるかもしれませんね。
- マーチ:チューバ常時OK(機能的)
- ロマン派風・現代風:間引きが設計的に重要
- 密度の高い和声:チューバ常時は過密化の危険
吹奏楽はチューバを抜くことで景色が変わる。というのは、無視できない一面です。
なお、バスチューバは紛れもなく、旋律を演奏することがある楽器でもあります。
毎度引用しがちなチャイコフスキー作曲の交響曲第6番「悲愴」の第二楽章では、バストロンボーンとともに、(ただの音階ではありますが)旋律を演奏する場面があります。
弦楽器の低音楽器
吹奏楽とは、本来は吹奏楽器+打楽器による編成ですが、例外として弦楽器であるコントラバスのみは、標準的と言えるほど編成に組みこまれていることが多いものです。
コントラバスとはどのような役割なのでしょうか。
コントラバス
音量で考えた場合、1本のコントラバスは1本のチューバに全く歯が立ちません。
1本のチューバは金管楽器全体の土台として機能できるほどの存在感を持つこともできますが、1本のコントラバスではやや心もとないです。
ただし、コントラバスには発音体の違いや、基音が強いという強みがあり、それは唯一のものです。
また、木管楽器の支えとしては十分な能力を持っています。
チューバというのは驚くほど機動力のある楽器ではありますが、音性の影響でもこもこしがち、音が太くなりがち、鈍重な音声になってしてしまいがち。
コントラバスはチューバとは違った音色で、チューバよりもすっきりしたベースラインを担当しうるという点で、ベースラインの書法をより柔軟にする可能性があるのではと思っています。
演奏難易度は高いようですが、オーケストラの楽曲で驚くほどベースラインが独立しており、大きく動くことができるのはこの楽器があってこそといえるのではないでしょうか。
コントラバスは、魅力的なベースラインある一面を提供できる重要な楽器であると考えています。
番外編:低音楽器とは言わないが…ティンパニ
この楽器については、むしろ、ベースだと思って書いてはいけないと思われます。
古典の時代ではトランペットと一緒に動くことも多かったですし、
「パリッと締める一撃」「緊張感を支配できるロールの力」「低音ではなく“構造のアクセント”」などの役割があります。
オーケストラの第二の指揮者といわれることもある本楽器。
低音楽器というよりは、方向性をつかさどる役割を担わされた楽器ととらえた方がよさそうです。
実はいろんな役割を任せられる低音楽器群
吹奏楽の低音楽器は、単にベースラインを演奏するためだけの存在ではありません。
ファゴットは音色の彩りを、
バスクラリネットは木管の支えを、
バリトンサックスは力強い存在感を、
チューバは安定した土台を、
コントラバスは弦ならではの基音と機動力を提供します。
低音楽器を単なる「ベース担当」と考えるのではなく、それぞれの個性を活かして使い分けることで、吹奏楽の響きは大きく変わります。
そんな個性の異なる楽器のいいところを使い分けて楽曲を書いてみたり、演奏するときも意識してみると面白いかもしれませんね。