POPSにも果敢にチャレンジ!クラシック作編曲家 田丸和弥の音楽日記

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ティンパニの楽器法! どのティンパニにどの音を演奏させるのか?

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今日は作編曲ネタです。

打楽器奏者兼の方はいざ知らず、打楽器の書法って難しい…

というアレンジャー多かったりしませんでしょうか?私がそうだったります…

(決してそんなことはないのですが)音程のある楽器は想像がついて簡単なのになと書きやすいのに、音程のない打楽器難しい…一発のインパクト大きいし…

なんて、ことはしょっちゅうです。

 

さて、そんな音程のない楽器の多い打楽器のなかで、音程のある太鼓である「ティンパニ」は稀有な存在と言えるかもしれません。

昔からここぞというところで使われてきた大事な楽器、進化著しい楽器でもあり、昔では考えられなかったスムーズな音換え可能になりました。が、その進化のせいか、誤った使い方もされがちともいえるかもしれません。

かくいう私も、過ちを犯して、叱られたことがございました…

 

今日はそんな話を書いてみようと思います。

 

ティンパニの楽器法 どのティンパニにどの音を演奏させるのか?

ティンパニの台数とサイズ

一般的な(とはいえ、そこそこ大きく充実した編成の)吹奏楽団で使われることが多いであろう23,26,29,32インチの4台のティンパニを前提に考えます。

特別な事情がない限りは、標準的な設備を念頭に作るのが、汎用性という意味においても、また学習の意味においても、良いと思います。

 

理想的な音の組み合わせの例

ここで、一つ理想的な音の組み合わせの例を提示してみたいと思います。

これは、友人のティンパニ奏者から実際にアドバイスされた例です。

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ティンパニの理想的な音の組み合わせの1つの例 左から32,29,26,23インチ

Bb major やEb majorであれば基本設定に使えるよい例であろうと思われます。実際にはこの上下いくつかの音を選択して使うようなイメージになるでしょうか。

経験者談を参考にそれを考慮したものが下の図です。

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ティンパニで使用に耐える音域の例

 

使用に耐える音域とその理由

各インチのティンパニで実際に演奏可能な音域はもっと全然広く、6度程度はあるようです。

が、各楽器の最高音域と最低音域の音は悪く、使うべきではないそうです。

最高音域は皮のテンションが高く「コンコン」と乾いた響きに欠ける音に、最低音域は皮のテンションが低く「ボヨンボヨン」と締まりも音程感もない音になってしまいます。

32インチと23インチの音域がやけに狭いのには「最適な大きさの楽器は懐が広く、極端な大きさの楽器はポテンシャルが多少劣る」(29インチ~26インチの楽器が標準的なんだと思われます)というのと、これは個人的な推察ですが、ティンパニ演奏の歴史的な経緯があるのではないだろうかと思います。ティンパニの音はF2~F3に収まることが多いのですが、そうだとすると、「真ん中2つのカマがカバーしなければならない音域が大きくなる」逆に「外側の2つは最適な範囲の音だけ担当することが多くなる」ため、このような音域差があるのではないかと思われます。

 

以下、真ん中2つのサイズのティンパニの担当音域が広い理由の仮説です。

どうやら、ティンパニの演奏で最適な調性というのはD majorやEb majorのようです。29と26インチのティンパニで「A, D」「Bb, Eb」あたりを設定するととてもよい音がするそうです。オーケストラでよく使われる調性でもあります。

これがC majorになると微妙になるようです。「C」の音は奏者によって、29インチと26インチどっちにしようかわかれる音なんだそうです(多分、こっちが最適と選びずらい微妙な音なんでしょう)。例えば、シューベルトの第ハ長調交響曲「ザ・グレート」の第一楽章は「G,C」の指定なのですが、32と29を使うのを好む奏者と、29と26を使うのを好む奏者がいたりするようです。

そんなこんなで、真ん中2つの釜には「C音」の選択肢が入ることになります。

今度は外側の音、29インチのF2と26インチのF3。第九の第二楽章のティンパニの調律がこれです。32インチと23インチのカマを使ったほうがいい音がするのかもしれませんが、4台のうちの外側2台を使うと演奏が大変しずらいですよね。ということと、当時はティンパニは2台しか配備しなかったと思われます。この理由のため、真ん中2つのサイズのティンパニの担当音は多いと考えられます。

 

冷静に考えてみたら、こねくりまわして考えずとも、中庸サイズの担当音域が多いのは容易に想像がつきますわな…

 

熟練奏者の視点は怖い…割り振る音をよく考えずに作曲したとしたら…

仮に作曲者がこのことを考えずに、適当に音を使った(たとえば、ヘ音五線第一線のFからG,A,Bなどと割り振るなどした)場合、ティンパニ奏者は適切なカマのみ使って済む方法を考えるそうです。(おそらくこの組み合わせだと32と29だけで何とかする)。

どうしても不自然になる箇所については、「あ~あ、こいつわかってないな」と思いつつ、裏の手(これは人によって違いそう)をつかうんだそうです。あぁ怖い…

 

失敗談 使う釜の想定を間違えた…

たとえば、前にこんなチューニングの曲を書いてしまったことがあります…

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失敗チューニングの例

この左側の音を想定して書いてしまったことがありました。一応楽器のポテンシャル的に出る音ではありますが、BbとDを26インチと23インチに演奏させたとすると、締りのない音になってしまいます。

で、これを友人のティンパニ奏者に渡したところ、見事に23インチを使わずに音換えをして演奏してくれました。1か所の不本意な音換えを除き…

 

音換えをして事なきを得られたら、逆に尊敬のまなざしが…

そう、音換えをして、何事もなくすんだのであったら、むしろ「ティンパニのことよくわかってるじゃーん!」で済んだのです。

音換えを自然に行うには、別のティンパニで音を出している時(=音換えするティンパニがミュートしている時)に音を変える必要があるのですが、1か所どうしてもそれが不可能で、リアルタイムで音が鳴っている状態で音程を変更せざるを得ない箇所がありまして…そんで叱られた苦い思い出があります。

(「楽譜を書き換えようかな…」といったら「それは(この譜面を演奏できないだなんて俺の)プライドが許さないからこのままやる」とも言われましたorz...)

その時に右側の案を提示されました。

作曲者的に、高音のGは使いたくはなかったのですが、ティンパニ奏者が楽器の性能を大事にして考えると不自然な音換えより高音のGの選択の方がはるかに理にかなっていたわけです。

 

この出来事はとても良い意味で自分に反省を促す機会となりました。ティンパニ書法…まだまだ発展途上ではありますが、以前よりはレベルアップしたはず…

ティンパニをベース担当楽器のように書いてある楽譜もあるらしいのですが…それは役割が違うのでね…ちゃんと勉強しましょう。

といいつつ、すさまじく素晴らしい楽譜を書く方がいらっしゃるそうです。「ジョン・ウィリアムズ」スターウォーズの作曲者!

演奏は凄く難しいらしいのですが、不可能なことは書いてないそうです。

 

はー、そんな楽譜を書けるようになってみたいものです。

 

演奏者側でできる対策?

そういえば、ティンパニ奏者の友人がこんなことも申しておりました。「23インチのティンパニを用意するより先に、26か29を2台用意したほうが有用だと思うよ…」と…

確かに、大抵の音がF2~F3から収まる上に、特に吹奏楽曲においてはどちらかというと低めの音が書かれがちなことを考えると理にかなっているように思います。

 

もう一つの案は、23と26を24と27に変更することでしょうか。こちらも低音が拡張されてますよね。

 

何はともあれ、現実に演奏する曲のスコアをにらめっこして考えてみてください。

そんなに、おいそれと買えるものでもありませんしね…

 

お勧めの本

こちら、新日本フィルの首席ティンパニ奏者を長く勤めておられました。近藤先生の著書です。

ティンパニ奏者とオーケストラ、ティンパニ奏者と指揮者の戦いの日々(?)について、大変興味深く書かれていて、大変面白いです。

オーケストラの第二の指揮者ともよばれるティンパニ奏者。「ティンパニ奏者の役目や目線」を読めるというのは、作曲、編曲者目線でも大変勉強になると思います。

ティンパニストかく語りき

ティンパニストかく語りき

 

 

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