今回は主にアレンジャー、作曲家目線で書いてみたいと思います。
吹奏楽におけるコントラバス
吹奏楽にコントラバスは必要だと声を大にして言いたい
貴重な音色源
基本的に、管楽器と打楽器しか存在しない編成における貴重な弦楽器であることが言えるでしょう。
この音色は、最低音に力強さと輪郭を与えるものだと言えるでしょう。
ピッツィカート奏法があるのも魅力のひとつです。他の楽器ではこの音色は出せません。
最低音域に強い
たとえば、チューバにおいては、下第三線のFあたりは、出せないことはないと思うのですが、反応の良さという意味においては難があるように思います。
音量音質を一定に保ちつつ、細かなパッセージにも対応しつつ、長いフレーズをも演奏し続けつつ、というのは大変でしょう。
この点コントラバスではクリアされるでしょう。
低音の敏捷性と発音のクリアさを実現
チューバという楽器の敏捷性は驚くべきものがあるのは事実なのですが、
コントラバスも熟練するまでは音が鳴り始めるまでにタイムラグがありそうではありますが、発音のクリアさという点においては、コントラバスに軍配が上がるでしょう。弦楽器の発音の明瞭さは他の楽器の追随を許さないでしょう。
貴重なビジュアル系
吹奏楽って動きのある楽器が少なくて演奏の見た目が地味なんですよね。
打楽器を除けば、管楽器ではトロンボーンくらいでしょうか?
そんなところで、役立つのはコントラバス!コントラバスを弾いている姿ってとても様になるんですよ!
弓で弾いてるのももちろん格好いいですが、弾く奏法もまた、格好いい。
楽器と戯れているようにすら見えます!
吹奏楽団にコントラバスが三本くらいあると、打楽器の対角線上も目の保養ができます!
一本と言わず…三本くらい欲しい。
大編成の話です。個人的にはチューバが1ないし2であってもいいので、コントラバスが3本以上欲しいです。というくらいコントラバスが欲しい…
コントラバスにはベースの主役の1つを担ってほしいのです、チューバとともに…
特に、ベースラインに細かなパッセージを書きたいときは、木管低音とコントラバスに書きたいのです。
チューバを入れてもいいのですが、その場合はチューバは1本に抑えたい。複数に書きたくない…輪郭がぼやけそうで…
木管主体の旋律にベースラインを付与するとしたら…ファゴット、バスクラリネットに足すとしたら…やっぱりコントラバスが恋しいです。
こんなことを書いていると「そんなにチューバが嫌いなのか!?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、いいえそんなことはありません。
場面に応じて、使い分けたいということです。
例えば、金管楽器群のコラールの低音にコントラバスはむしろ入れたくありません。その最低音域はチューバのみに担当させたいです。金管楽器群による優しく柔らかい音色はほかに代えがたいものがあります。
要は、最低音域を二段構えにしたいと言うことで、それをチューバとコントラバスに担わせたいということです。
もちろん、低音木管も必要ですよ!
ただ、コントラバスクラなどは除いて、低音木管はベースの役割ばかりではなく、テノール的な役割をも担わせたい。その方が楽曲の色彩が豊かになるでしょう。
ベースの細かなパッセージにも書かせない存在です。
コントラバス豆知識
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとは出自が異なる楽器
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロはヴァイオリン族、コントラバスはヴィオール族という楽器が由来です。
といっても、現代においては両者のいいとこどりのようになっていますが…
コントラバスにはヴィオール族の特徴がまだ残っています。
- 調弦が4度調弦である(ただし、5弦バスの一番低い音の調弦は異なります)
- なで肩である。
ヴァイオリンなどは5度調弦です。ヴァイオリンは低い方から(G,D,A,E)。ヴィオラとチェロは(C,G,D,A)。
これに対してコントラバスは4度で低い方から(E,A,D,G)となっています。5弦ベースの一番低い音はCまたはB(H)に調弦することが多いようです。
ヴァイオリン族の楽器とコントラバスを見比べてみていただけるとお分かりかと思いますが、ヴァイオリン族はいかり肩。コントラバスはなで肩です。
運指が独特
ヴァイオリン族は人差し指から小指まで4本の指を使って弦を押さえます(音程を作る役割が4本にある)。これに対してコントラバスは3本の指(厳密には4本使うのですがそのうち1つはサポートの役割)を使って弦を押さえます(音程を作る役割が3本ある)。
おそらく、胴体が長いので、4本だとポジションを作るのが難しかったのでしょう。
チェロは4ポジションあるのに、コントラバスは3ポジション…その上調弦が異なると、かなり違う楽器ですよね。
それにも関わらず、コントラバスはチェロのもともとの役割である「バス」の「コントラバス」の役割で、チェロと1オクターブでユニゾンを演奏させられることがよくありますね。コントラには1オクターブ低いの意味があります。たとえば、コントラアルトクラリネットはアルトクラリネットより1オクターブ低い音が出る楽器…のような。
有名な話ですが、ベートーベンの第九は激しく難しいらしくて、「一人では楽譜通りに弾けない」なんて話を聞いたことがあります。オーケストラは複数人で同じパートを演奏してますので、その点は問題ないようです。
演奏なんてものは、個人が完璧にであることよりも全体で聞いたときに最良になるように聞こえればよいのですよ!
さて、イチオシのコントラバスなのですが、魅力が少しでも伝わっていたらいいのですが!
みなさん、コントラバスに注目してくださいね。
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