POPSにも果敢にチャレンジ!クラシック作編曲家 田丸和弥の音楽日記

鴨川在住の作編曲家が、作編曲家、演奏家、音楽愛好家さんへの便利情報を提供します。時々鴨川ネタもご紹介


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rit.とriten.の違いはなあに? 間違いやすい音楽用語

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rit.とriten.って同じような意味?いえ全く違います。

(今日は予約投稿を使ってみます)

 

 

間違いやすい音楽用語

速度変化指示

テンポを変化させる指示、rit.やらaccelやらたくさんあります。ただでさえ、数が多いのに、あれ、「これ同じ意味じゃないの?」って思うものもありますよね?結果として生じる現象にのみ着目するとそうなのですが、そこへ至る意図や動機まで含めると全然意味が違ったりします。

今日はそんなところをちらっとだけ、かじってみます。

rit.は「だんだん」遅く、riten.は「直ちに」遅く

これは、綴りも似ているし、本当に間違いやすいのですが、全然意味が違いますので、"rit."は"ritardando"の省略形。"riten."は"ritenuto"の省略形です。

 

…と思っていたのですが、こんな記事を発見…はぁ、マジすか…

 

ameblo.jp

 

ということで、"rit."は"ritenuto"の省略でもある可能性があるようです。

(現代のイタリア語を母語にしない人達はritardandoの省略の意味で使っていると思われます…)

 

え!?ってなると、ベートーベンやブラームスの演奏スタイルは全く異なる可能性があるってこと!?

どひゃー…

 

ということは、本来は"ritardando"はそのまま書くか、"ritard."って書くべきなのね。

accel.とstring.とincalzando

どれもテンポを速める指示です。

"accel."は"accelerando"の省略形、"string."は"stringendo"の省略形です。

accelerandoは発音から推測できるように、アクセルを踏み込むようなテンポ変化の意味があります。テンポを上げること自体に意味があります。

続いての2単語については、テンポを上げることは副次的、結果的にそうなるだけで、他に意識すべき点のある単語です。

incalzandoは「急き立てるように」という意味があり、テンポを速めるのと同時にcresc.もしていきます。急き立てられた(プレッシャーをかけられた)結果、興奮状態になり、テンポが上がったり、音量増大したり、という現象が起きる。ととらえるべきで、テンポを速める指示ではあるものの、本来の意味の「急き立てるように」という方により着目するべきでしょう。

stringendoは「たんだん締め付けるように、だんだん切迫させる」という意味があります。これもincalzandoにちょっと似ていますね。締め付けられて縮む

rit.とallarg.とrall.

同じように徐々に遅くするという意味を持つ言葉ですが、それぞれニュアンスと付加情報の有無の点で異なります。

"allarg."は"allargando"の省略形、"rall."は"rallentando"の省略形です。

ritardandoは「遅くする」というより「自然に遅れていく」というような受け身な意味です。

これに対して、rallentandoは「遅らせる」「遅くする」という意思のあるテンポ変化です。

allargandoは「遅くする」とともに「cresc.」をする意味を持つのですが、これは本来は「幅を広げていく」という意味を持つもので、幅広くゆったりさせた結果、テンポが落ち、音量が増していくということのようです。

 

「遅くする」と「遅くなる」と表記すれば、問題ない気がするのですが、しかし、このうちの「遅くなる」は聞き手にとって「遅くなっているように聞こえる」が正解で、そう聴こえるように演奏するのがOKです。演奏が、演奏者達の都合で、「勝手に遅くなる」のはもちろんダメなのです。

となると、日本語の意味として「遅くなる」と書いてはやはり、NGなのか…でも、ニュアンスはそうなのです。「遅くしているのがわかる演奏」と「(心地よく)遅くなっている演奏」はやっぱり違いますよね。

 

ニュアンスを知るには原語の使用例や辞書を引くとよい

ここまで読んでいただけた方にはわかっていただけると思いますが、音楽用語としての意味として知られているものは、状態を単純化、簡素化したものが多いですよね?

でも、これにも合理性があって、あまり詳しくない人に説明したり、一度に大勢の前で説明したりするときには効果が高いでしょう。

"ニュアンス"を含む説明は言葉の意味を理解して、どんな状態を求めているのか想像するまで時間がかかってしまうでしょう。

でも、演奏の本質的な表現をするためには、ニュアンスまでさかのぼって理解するのがお勧めです。「作曲家がなぜその言葉を使ったのか?」というのを汲み取るのは楽曲を理解しようという姿勢にもつながるでしょう。

 

ただ、あまり深く考えずに使うケースもない…とは言えませんので、「ん?」と思うケースに当たった場合は、スコアをよく読んで検討してみてください。

 

英語でなんというのか?に着目するのもよい

イタリア語と日本とより、イタリア語と英語の方が近いのは想像がつくでしょう。日本人にとってなじみがあるのは、イタリア語より英語でしょう。

ということで、イタリア語の単語を英語だったらなんというのだろう?という観点で調べてみるのも面白いです。

 

良く出る接頭語 piu=more、meno=less

これがよい例です。more, lessは(音楽に親しんでいる人を除けば)piu, menoよりなじみがありますよね。比較級にあたるので、piuは「前より少なく」menoは「前より多く」と解釈できます。

 

un=a、poco=little

これも覚えておくとよいと思います"un"が英語の冠詞"a"にあたり、"poco"が"little"の意味に当たります。なので、"un poco"は"a little"となり「少し~」という意味になります。ということは"poco"のみのときは"little"となり「ほとんど~ない」という意味になります。

なので、これをちゃんと使い分けて書いている作曲家の場合"poco"の指示があった場合は、状態をほとんど変えてはいけないということになります。とは言いつつも、わざわざ言及しているので、 ほんのわずかには変えることに変わりはないのですが…

程度の問題なので、なんとも言い難いですが"poco"が"little"の意味で使われているのか"a little"で使われているのか、一度ちらっと考えてみてもよいかもしれません。

ちなみに、あまり気にしているとは思えない作曲家も結構多いです…

お勧め書籍

まず、読み物として単純に面白いです。音楽をやっている人にとっては、「へー!」連発の面白い本です。また、音楽用語がどういう意図で書かれているのか?ということを考えるきっかけにもなり、演奏表現の向上も見込まれます。

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