2日の予定が3日空けてしまいました…(昨日は太鼓の練習に付き合う必要がありまして…時間が取れませんでした…)
気を取り直して、再始動します。
今日は、吹奏楽やアンサンブルの合奏時によく言われる「周りを聞いて合わせて」という言葉について。
縦(各々の拍感)がずれてきたときや、音程が合っていないときによく言われると思うのですが、この言葉気を付けないと、問題を解決させるどころか悪化させる可能性があります。
演奏者は言わずもがなですが、もしかしたら、まだ、歴の浅い指導者のみなさんも誤解しているかもしれません。
「いやいやいや、これは違うでしょ」でも構いませんので、ご一読いただければと思います。異なる考えでも、自分の考えを見つめ直すきっかけになりますよ。そういう機会になれば幸いです。
聞いて合わせるは間違い!? 合奏のポイント
いきなりショッキングなお題目かもしれません。「えっ!?聞いて合わせるって間違っているの!?」
いいえ、そんなことはありません。
実はこれは言葉足らずで、適切な補足をすればとてもよい演奏になるでしょう。
ただし、間違った補足をすると、ズルズルズルズルおもたーい音楽になるでしょう。
何をどのタイミングで聴くのかがポイント
まず、俗に言う「縦を合わせる」という観点で。何をどのタイミングで聴くのかと言われても?かもしれません。
逆に質問してみます。自分の出すべきタイミングと同時になる他の音を聞いて合わせたらどうなるでしょうか?
遅れます。当然です。
でも、これをしちゃっている人案外います。他の人が入ったのを聞いてから入る…「いやそんなことしてない」という方いらっしゃると思います。では、他の人が入るのを確認してから、いや、他の人が入るタイミングを探ってから入っている…という方はどうでしょうか?
これは、案外多いのではないでしょうか。
これをすると、
遅れる→遅れた様子を聞いた周りが遅らせる→どんどん遅くなる。
or
遅れる→遅れた様子を聞いた周りがテンポを戻そうとする→バタバタする。
が発生します。
これは身に覚えのあるかたも多いのではないでしょうか?
そうなんです、周りを聞いてから入っていては遅れてしまうのです。
入るより前の拍感を聞くべし
では、どこを聞くのか?と言うと、発音をするまさにその瞬間や直前ではなく、「自分が出るよりもっと前の部分で、拍感を感知できる範囲を聞く」が正解です。
前の流れを聞いて、自分の体に乗せて、自分も流れを作っていく!ということをすれば楽団の素晴らしい演奏に大貢献できることでしょう。
拍感を感知できる範囲を聞かなければなりませんので、その情報に満たない範囲だけ聞いてもダメなことは補足しておきます。なので、直前では不十分であると言えるでしょう。
「曲の頭はどうするの?」「テンポが変わるところは?」その場合は、「音を聞く」ではなく、「指揮者の予備拍のテンポ感を感じる」ということをすればいいのです。
テンポが変わる部分においても、必ず指揮者は前になんらかの合図を出しています。
振り下ろす速さであったり、ブレスであったり。
聞くより見るべし…かも
聞くのも大事なのですが、タイミングに関しては、奏者の動きを見る方が重要であるとも言えるでしょう。
みなさん、演奏中に、楽譜にかじりついていませんか?
指揮者を見るのももちろんですが、コンサートマスターやパートリーダーは絶えず合図を出しています。
音楽なので、それを邪魔する声で指示をすることはできませんので、動きでテンポ感であったり、音強であったりの指示をしています。
回りの様子を伺う…という意味においては、見るのも大切ですよー。
ちなみに、私は音楽がすべってきて、どんどん早くなりそうだな…と感じた場合は、暴走を抑えようとして縦に揺れてます(その効果はいかほどなのでしょうか…)。あまり、見てもらえている気がしないので、修行が足りてませんorz...
ピッチも同様、前の部分を聞いて予測すべし
ピッチに関しても同様です。こちらは、仮にずれてしまった場合は、周りを聞いて合わせるべきではあります。その点においては、「発音時 or 発音以降の周囲を聞く」というのは正しい行為ではあります。
でも、これはリカバリーの方法に過ぎません。
本来であれば、最初から合っていないといけないわけです。
ということは、音程に関しても、その瞬間を聞くのではなく、もっと前の様子を伺って、今、「この合奏体はどういう傾向にあるのだろうか?」という分析をし、自分のはめるべき位置を見極めなければなりません。
曲頭に関していえば、そのためにチューニングをするわけですよね。チューニングはただパフォーマンスでやっているのではなくて、これから演奏する楽曲のピッチや音程を合わせるためにやっているわけです。
チューニングはその音を合わせるのも目的の1つではありますが主ではなく、その音を基準に自分の音程の癖に合わせた、楽器の調整をする(or 場合によっては自分のコントロールの塩梅を決める)のが目的です。
たとえば、チューニングで使う音が他の音にくらべて高くなってしまう。という癖を持っている場合、(各々、自分にふさわしいスタイルがあるとは思いますが、例えば、)チューニングの音は、他の音をちょうどいい塩梅で演奏できる程度に低めに吹いて調整する…というような事をする必要があります。
だって、チューニングの音が高くなってしまうのであれば、それを中庸に吹いて楽器を調整したら、他の音が低くなってしまいますよね。
ということで、聞くべきは前なのです。
能動的に聴こう
能動的に聴くとはなんぞや?と思われた方もいるかと思います。ようは、「聞け!」と言われているからなんとなく聞くのではなく、ちゃんと目的をもって聞きましょうという事です。
聞くにあたって意識すべきこと
- 予測をする
- 実際にやってみる
- 評価をする
これを聞きながら、演奏しながら常に考えることが必要です。
「予測をする」というのは、前で述べたように、前のタイミングや響きを聞いて、自分のふさわしいタイミング、ピッチを予測するという事です。
その予測に合わせて「実際にやってみて」その結果を「評価します」。タイミングは合っていたか?、ずれていたとしたらどうずれていたか?どことずれていたか?(この状態になっていたとしたら、一番合わせるべきはどこなのかという問題をクリアする必要があります)
ピッチはハマっていたか?、高かったか?、低かったか?、どことずれていたか?(タイミング同様、どこと合わせるのが一番被害が少ないか考える必要があるでしょう)
一番大切なのは、自分の中に正解を作ること
今まで、さんざん「前を聞きましょう」と行ってまいりましたが、一番大事なのは聞くことではありません。
聞くというのは、情報収集の手段にすぎません。
では、何が大事なのか?と問われますと、自分の中に確固たる正解をもって、それと自分の演奏を比較しながら演奏することです。
だって、自分が正解をわかっていない場合は、聞いてもアクションをすることができません。いえ、もしかしたら「合わせる」ということはできるかもしれません。でも、それが演奏に悪い影響を及ぼす方面に行っていたとしたら、どうでしょうか?
全員がそれをやってしまうと、音楽はどんどん停滞、崩壊の方向へ向かってしまいます。
なので、自分を信じて、常に正解を意識して演奏することが必要です。
一つ、誤解していただきたくないのは、「正解は固定ではない」ということです。刻一刻と変わります。人間のやることですから、毎回同じようになるわけではありません。
エラーだってあるでしょう。その時々で最善と思われる正解に近づけるように演奏してきましょう。
最重要はベースライン、確実に冷静に心を強く持って
楽器歴の長い方はよくお分かりかと思いますが、自分の中に確固たる正解をもって、もっとも音楽を流していかなければならないのはベースラインと打楽器であることを付け加えます。
楽曲にもよりますが、ベースラインは旋律がひよっても、旋律が歌いまくっても、不自然になるほどテンポをいじってはいけません。むしろ、旋律担当に対して「ずれすぎるなよ」と釘を刺すように。自らが音楽の流れを作る重要部隊であることは、お忘れなく。
打楽器についても同様です、曲によってはベースよりももっと影響の大きいこともあるでしょう。場合によってはここぞという一打で、雰囲気すらガラッと変えますからね…いろいろな意味で恐ろしい楽器です。
ベースラインと連携して音楽の流れを作って行きましょう。
でも、指揮者とコンマスの動きは無視しないでね…
楽器を演奏できることは、そもそも凄いことである
ここまで書いてきたことをお読みのみなさん、「えー…すごく難しい」と思われるかもしれません。
でも、その通りです。
だって、いい演奏をするのって難しいんですもの。
というか、そもそも楽器を演奏できるあなたはすごいのです。
楽器の演奏というのは、楽譜を読んで解釈をし、楽器から音を出し、周りとの調整をし、(指揮者の意向などを伺いつつ)先を予測し、「あーブレスはどのタイミングで取るのが最善だろうか」とか「このフレーズはどう演奏すべきだろうか」とか「この四分音符はテヌート気味に演奏すべきだろうか、それともスタッカート気味にすべきだろうか」とか「このfは他の楽器とのバランスを考えてどの程度だろうか」とか「どういう音色がふさわしいだろうか」etc…
莫大な情報を処理しつつ、音を出すことを実現しているわけです。
自信を持ちましょう。
でも、でも、さらなるレベルアップと合奏へ貢献するために、すこーしでも琴線に触れることがあったら、すこーしだけ頑張ってみましょう。
ちょっとの頑張りで、大きく変化するかもしれませんよ。
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