こんばんは。みなさんいかがお過ごしでしょうか?
とうとう春がやってきた感じがしますね。
花粉がね…
どうも、春は花粉やら、寒暖差の差やらで自律神経が疲れるらしく、常に眠ーい。
ちゃんと休めってことでしょうかね?睡眠を十分にとらねば。
非和声音を見分けよう!表現力のある演奏への第一歩
非和声音とは ~意味合い、役割を知っていただきたい!~
さて、今日は楽典というか、音、もっと限定すると非和声音の種類について、音と視覚両方のサンプルを用意して、解説してみます。
ちまたには解説記事がたくさんありますが、「どういった意味合いや役割を持つ音なのか?」という点にフォーカスした記事は見当たらないのでその点について自身の経験と主観を交え書いてみたいと思います。
ちなみに、なぜこの記事を書いたかと言うと、「非和声音の知識があると演奏表現の助けに非常になるから」です。
表現付けには「こうしたいという!」意識的なアプローチとそれを実現する技術的アプローチがありますが、その前者を鍛える方法です!
こちらの記事で、ちらっと触れた倚音についても出てきます。併せてお読みくださいな。
ちなみに、「倚音とはなんぞや?」だと思いますが、これは演奏における超絶なキーとなる音なんだそうです。私も、勉強+経験的に倚音の重要性は理解できます。リンク先の記事でもこちらの記事でも解説いたしますので、読み進めていただけると幸いです。
さて、本題です。
なぜ非和声音の種類を知るのが重要なのか
ずばり、それぞれの音に異なった役割があるからです。
それは、例えば「音と音を滑らかにつなげる」であったり「音を装飾する」であったり、「緊張感を与える、焦らすetc...」だったりします。
最初の2つについては補助的な(しかし大切でもある)ものですが、最後の「緊張感を与える、焦らす」については、表現の肝となる重要な役割を担っているということが推測できると思います。なぜならば、具体的な感情を伴う効果が書かれているためです。レイヤーを合わせ「解決を遅らせる役割」とすることもできますが、機能和声に慣れた耳には「解決を遅らせる機能」は、他の補助的な機能と比べると異質で明らかに感覚に訴える音であるため、「緊張、焦らす」という「感覚へ訴える」表現を使いました。
そうなんです、非和声音には聞き手に対して、感覚や感情に直接訴えうるような、旋律や和声のアクセントを与える重要な役割を持つものがあります。
ということは、この役割を持つものを見分けて、そこに意味を持たせた演奏をすると「表現豊かな演奏」になる大きな第一歩たりうるということです。これは、個々の感性によるものではなく、とてもシステマティックなものであるため、誰しも習得できます。
非和声音あるなしサンプル動画
では、ここで、「非和声音なし」の旋律と「非和声音あり」の旋律を聴いてどう違うのか感じていただきたいと思います。
即席で8小節の曲を作ってみました。古典風です。よりよく比較するためにはリズムを一緒にするべきだったかなぁ…どうなんだろう。後半若干無理やりなのはご愛嬌…ということで。
最初に流れる非和声音を使わないものは、もはや旋律に聴こえないかもしれませんね…というのも、和声音しか使えないため、音階を滑らかに演奏することすらできません。
それに対して、非和声音を使ったものについては、音階を滑らかにつなぐことができたり、装飾が加わったり、「はっ!」「あ゛ぁ」とする場面があったり、ちゃんと旋律になっていますよね?
この比較をしていただくだけでも、非和声音の重要性がわかっていただけるのではないかと思います!
ですが、更に一歩踏み込んで、個々に解説してみたいと思います。
非和声音を画像で解説
では、ここで使用した非和声音を見分けやすくした図と解説を簡単に記しました。
この通りです。
まず、この組段(5線のセットのことです。この譜例では4段で一組になってます)の解説ですが、上から「非和声音なしの旋律(旋律をある程度単純化したものとも言えます)」「非和声音ありの旋律」「伴奏」「和音」となっています。
非和声音を見分けるには、一番下の「和音」の段から和声音を拾ってきて、ここに当てはまらない音を探せばOK。
今回はあらかじめマーキングしてあります。「☆」と「楕円で囲った部分」がそうです。
では、非和声音を解説していきたいと思いますが、その前に、非和声音を見分ける際に一つ重要な点があります。
「強拍にあるか否か」ということです。強拍とは第1拍および4/4の場合の第3拍etc…などを差します。
ここで、勘のいい方ならもうお気づきかと思いますが、わざわざ見分けるためのキーとなっているということは、「強拍」は大事な概念だということです。
これを意識して、各音解説に移ります。
経過音
水色の☆がついた音がそうです。たくさん出てきますね。読んで字の如くで「和声音と和声音の間に経過的に出てくる音」です。強拍部には出てきません。旋律を滑らかに繋ぐ役割と思っていただければ間違いないかと思います。
倚音
橙色の楕円で囲った音です。強拍部や和音変換点*1に表れます!
ここで、倚音か否かの見分け方補足です。
同じように見えても、タイミングでどの非和声音になるのか変わってしまいます。
F音(ファ)の音がどちらも非和声音なのですが、左側は経過音で右側は倚音です。和音転換点(3拍目にVからIのコードに変わってますね?)にファが来ると倚音に変わっちゃいます。
見た目からは「ふーん?」くらいにしか思わないかもしれませんが、是非弾いてみてください。全然意味合いが異なるのがわかると思います。
掛留音
黄色の楕円で囲った音です。強拍部や和音変換点に表れます!倚音との違いはタイで結ばれているか否か!
逸音
ピンクの☆です。強拍部には表れません。経過音と異なり、和声音を経過的につなぐのではなく、逸脱した動きをするのが特徴です。
この音も読んで字の如くで理解しやすいと思います。 「あれ?」と思わせる音ですよね。
刺繍音
青い☆です。強拍部には表れません。和声音と和声音をつなぐのは経過音と同じですが、経過的につなぐのではなく、後続音が元に戻るのが特徴です。この音も読んで字の如くで理解しやすいと思います。飾りつけの音です。
先取音
紫の☆です。強拍部には表れません。後続の和声音を先取りするから先取音と呼びます。この音も読んで字の如く。旋律の段落足りうる終止で使われるのがほとんどです。古典の曲にはたくさん見られます。
どれが重要な音なのか?
ということです。
ここまで読んでくださったかたは、もう予測がついていると思いますが、ずばり「倚音」と「掛留音」です。
強拍や和音が変わる部分に「突然現れる」というのがポイントです。想像してみて下さい。
拍節の大事な箇所、節目に、予想を裏切り、その時点の和音に存在しない異常な音が現れる…
ほら、大事な感じがするでしょう?
いわゆる「芸大和声」とよばれる本には非和声音は「和声音が転位したもの」と解説されています。本来その場所に来るであろうと期待される音がわざとずらされているのです。当然その音はあるべき音に戻りたがるというか、機能和声に慣れた脳はそう解釈したがります。
経過音や刺繍音のようなものはそもそも和声音の間を埋めたり、飾りだったりして、元に戻りたがる…というよりは、もともとあったところに埋め込んだり、ちょっと付け加えたりといった性質と言ってもよいかと思います。(逸音はちょっと特殊な感じもしますが…)
これに対して、倚音や掛留音は非和声音をサポートする役割ではなくて、これ自体が主役といった印象の音。本来あるべき音の前に陣取って、強く主張をする音です。和声の解決を遅らせる音とも言う。作曲家目線で言えば、焦らした感覚を与えるといったような重要な役割を持たせるために、わざわざ配置されている音と解釈すべきでしょう。
焦らしのテクニックは駆け引きには重要ですよね?それと同じような音です!
実際、この2つの非和声音の箇所をよく観察して、非和声音なしとありの音源を聴き比べてみてください。非和声音ありの方は「あー、居心地が悪い!」「ちょうどいいところに収まりたい!」という感覚や、「緊張感」、「焦燥感」または、「あぁ、この収まらない感じが快感…」と聴こえるのではないでしょうか?
特に「倚音」は大切です。下記でご紹介している書籍にもこのように書かれています。
「演奏の中で倚音の占める音楽的比重は大きいものがあり,倚音の解釈と演奏が正しければ,その演奏の大半は成功であるといってもいい過ぎではない。」(熊田為宏, 演奏のための楽曲分析法,1974,P54)
ここまでで、なぜ非和声音を見分けるのが大切なのかが分かっていただけたと思います。
大事なのは焦らし効果を狙って書いてることを汲み取ること!
演奏者が戻りたい、焦らされてる感覚をまず感じ、それを聴衆に共有させるように演奏しないと伝わらないですよ~効果半減もったいないです!
アマチュア演奏家のみなさん、これからは音の解析をして、表情豊かに演奏してみてくださいね!
「お、表現力があがったね!」「雰囲気があるねぇ!」なんて言われるようになるかもしれませんよ!
さらに詳しく知りたい方は、こちらの本をお勧めします!
*図の補足です。特殊な例ですが、5小節目、2拍裏の経過音(H)は3拍目の倚音を和声音(C)に解決して考えていただけると納得頂けるかと思います。
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*1:和音が変わるポイントで強拍部とは限りません