POPSにも果敢にチャレンジ!クラシック作編曲家 かずまるの音楽日記

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今更聞けないトリルについて

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ちゃんと理解しているようで、「実はなんとなくやっている」という方が案外多そうな奏法の一つ、「トリル」について書いてみます。

トリルを書く(楽譜を書く)側も「奏者はこういうところで迷う…」という点を知っているとよいと思われます。

 

 

今更聞けないトリルについて

トリルとはなんぞや?

そもそも、トリルとは?という方もいらっしゃいますよね?

トリルとは、ある音と二度上の音を交互に繰り返すことでその音を目立たせる装飾技法です。(ドレドレドレドレド とか ミファミファミとか)です。

回数や速さは奏者に任されております。

最初ゆっくりでだんだん速度を上げていくようなケースも多いですよね。

 

トリルは記号で指示されます。

トリル記号

トリル

trがくっついたような記号がトリル記号です。

トリル記号の後ろに「にょろにょろ」がついていることがありますが、これは視覚的にトリルの範囲をわかりやすくするためにつけられることがあります。通常の使い方の場合、この書き方で問題ありません!特殊なケースは記事を読み進めてみてください、答えが書いてあるはずです。

ここまでがトリルの超基本事項です。

 

では、ここからは基本的なルールをおさらいしてみようと思います。

トリルの基本的なルール

開始音は時代・スタイルによって異なる

現代の奏法では、基本的にはトリル記号のついた音から開始するのが通常ですが、バロックや古典の時代の曲の場合には、二度上の音から開始することがあります。倚音的、前打音的な使い方だと考えられます。

バロックや前期古典派におけるトリルの演奏方法

バロックや前期古典派の場合に、多く採用されるトリルの演奏方法

また、開始音が指定されることもあります。(注意:今回は、1拍目オンタイムで書いてますが、小節より前に出すか否かは都度検討が必要ではあります)

これらはビジュアル的にわかりやすいので間違えることはないかと思われます。

トリルの開始音

終了音はトリル記号がついた音

基本的にトリルは、トリル記号がついた音を目立たせる装飾技法です。2度上の音は目立たせる役目を持っておりますが主役ではなく、主役は「トリル記号がついた音」です。

そのために、「主役は俺だ」とわかるように「トリル記号がついた音」で終える必要があります。仮に2度上の音で終わってしまうと、どちらが主役かわからなくなり、一体なんの和音なのか?どんな和声を演奏しているのか、わからなくなってしまいます。

また、終わり方を後打音として指定されることがあります。

トリルの終わりの音

この終わり方…実は厄介でして、後打音で提示されていなくとも、このように二度下の音を介して終わることがあります。

このように言ってしまうとズルいのですが、これもケースバイケース…です。音の配置や時代などで、おそらく「こうするのが通常だっただろう」と推測することはできますが、絶対かと問われると私は断言できません(汗)

指揮者がいる場合は、思い切って聞いてしまうのがよいかと思います。

 

ちなみに、私が書く場合、二度下の音を介して終わりたいときは後打音を書きます。二度下の音を介して欲しくないときは書きません(通常の書き方)。で統一しております。

現代の一般的な記法はこうなるかと思われます。

調号を無視してはいけません!

トリルはトリルのついた音も、その二度上の音も調号に従って演奏する必要があります。

以下のような形です。

調号を無視しません

調号を無視しません

トリルの上の変位記号、音符についた臨時記号

トリルのついた音およびその2度上の音について、調号と異なる音を演奏させたい場合、トリルのついた音には臨時記号を、2度上の音については、トリル記号の上に変位記号を付けて表記をします。

奏者はそれに従えばOK。

トリルと臨時記号

時々ある誤解、トリルは長二度?

時々、トリルの音程は長二度(ドとレの音程、ミとファ♯の音程)だと勘違いされている方がいらっしゃいますが、そんな規則はございません

上の図でも半音(短二度)のトリルが出てきましたが、二度であれば長、短、増、減どれも可能性としてあります(減音程のトリルはあまり思い浮かばないけれども、ハープだったらありかなぁ…ミとファ♭とかね…トリルというよりも同音(正確には平均律における異名同音)の連打のための指示でしょうか)。

音程の指示はトリルの上の変位記号、トリルの書かれた音符の変位記号、その小節の臨時記号および調号で指示されます。

 

トリルの記号が複数ある時はどう演奏する?

トリル記号が連続してある場合は、どう演奏すべきでしょうか?

トリルが複数ある場合の演奏例

こんな風に「トリルが2回書いてあります」とわかるように演奏するのが良いかと思われます。(または、トリルのついた音の最初を強調するなど)

これは、直感的にわかりますよね。

似て非なるケース…

複数小節にまたがった長音符についている場合どうすべきでしょうか?

複数小節にまたがっているトリル

こういう時、トリル2回に分けて演奏すべきなのか、それとも一連で演奏すべきなのか?

これは、ケースバイケースだと思われます。作曲者がどちらのつもりで書いたのかを検討する必要があります。

 

例えば、この譜面(これは、厳密にはトリルというよりはティンパニのロールですが…)

トリルをやり直すべきか否か

トリルをやり直すべきか否か

このように書いてあったら、どう演奏すべきでしょうか?

 

正直なところ非常に迷うのですが…

 

私は、2小節ワンセットのトリルと解釈するかなぁ。というのも、他のパートは2小節でワンセットになっているからです。弦楽器群、上にあるバストロンボーンとチューバの譜面が根拠です。

 

ただ、他の部分の記法を見ると、ティンパニのトリル記号が長く伸びているところもあるのです…

 

ティンパニだけ、小節毎に叩き直す…という可能性は否定できません。そういう効果を狙っている可能性があります。

他の楽器はやっておらずとも、ティンパニだけやるというケースはあります。そういう役割を持った楽器でもあります。

 

なので…どうしても答えが見つからず決めかねる可能性もあります、上の場合は、他のパートを参照することで、「これじゃないかな?」と思える根拠が見つかりました。でも、当てはまらない場合もありますよね。その時は決断するしかありません。

仮に、1小節目のみにトリル記号があり、にょろにょろが2小節目まで伸びている場合は、一連で演奏すべき可能性が高いでしょう。タイでつながれていればもっと確実です。

譜面を書く場合はこのあたりを考慮して書くと親切かと思われます!

ちょっと意地悪かも?こんな時はどうするの?

レアケースについて検討してみようと思います。これ全部制覇したら、もうあなたはトリルマスター。

トリルの前の音に臨時記号がついているときは???

トリルの前の音の臨時記号

トリルの前の音の臨時記号

こんなケースですね。このケースの特殊なところは「トリルのついた音」のみならず、「二度上の音にも臨時記号がついている」点でしょうか。前者は比較的よく見られますが、後者は見た記憶がないかも???

でも、これは単純に臨時記号の法則に従って考えればOKです。臨時記号は小節内有効なので…

トリルと臨時記号

こうなります。

 

タイがある場合は???

タイがある場合は臨時記号はどうなるでしょうか???

トリルとタイがある場合は臨時記号

これも通常のタイの法則を適用すればOKです。臨時記号がついた音符におけるタイの法則(タイでつながれた音はタイでつないだ音の臨時記号が有効)を適用する。

特殊なのが二度上の音の扱い。どうすべきでしょうか?こちらも、タイでつながれているとみなすべきでしょう。

となると…

トリルと2度上の音とタイの関係

このように演奏するべきでしょう。

 

ただし…こういう複雑なケースにつきましては、誤植があったり、誤解があったり、また浄書法が確立される前後で認識に相違がある可能性がありますので、その都度検討する必要があるかと思います。

書き手としてできる対策としては、警告の臨時記号(見落とされがちな部分につけられる、親切臨時記号)を付けるのがよいかと思います。

警告の臨時記号

警告の臨時記号

こういうケースはなかなか、出てこないと思いますが...

 

 

トリル番外編 ティンパニのトリル!?

ティンパニにトリルが書かれていたとしても、それはトリルでは演奏しません。連打(ロール)奏法で演奏します。

ティンパニのトリルの奏法例

ティンパニのトリルの奏法例

ロール奏法の記譜スタイルは同音のトレモロ記号を使う場合が多いのですが、トリル記号を使う作曲家もいます。ドヴォルザークのスコアで見たことがあります。

大太鼓など、音程のない打楽器についても同様です。

 

トリルいかがだったでしょうか?

基本的な奏法にもかかわらず、案外奥深いですよね?

これで、今日からトリルでは迷わない!(ちょっと大げさか!?)

 

演奏改善についての関連記事

変化記号および本位記号について

www.petit-orchestra.jp

この記事でもトリル上やトリルのついた音の前などで出てきましたね!基本的なルールをもう一度おさらい。

 

楽曲解釈に必須非和声音について(響きの難しさに囚われないでいただきたい!)

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聞き覚えではなく、楽譜はよく読みましょうと言う話。

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