本日も、クラシックピアノのレッスンを受けた人ならば、一度は通るのではないか?と思われる、その筋では超有名な、グスタフ・ランゲ作曲の「花の歌」のアナリーゼ(解析)なんてものをしてみようかと思います。
中級にさしかかろうとしている人にとっては、一度は弾いてみたい曲!ではなかろうかと思われます。美しいロマンティシズムにあふれた曲で、美しく歌う部分、情熱的な部分、甘く歌う大人っぽい部分、とピアノの表現。
ということで、演奏の参考や、「へー」的な視点をお届けできればと思っております。
あくまで、私の個人的見解ですので、参考程度に考えてくださいませ。
花の歌を解説・解析(アナリーゼ)してみる ピアノ 弾き方
基本情報(拍子、調性、構成など)
8分の6拍子、メインの調性は変ロ長調、構成については、A-B-A-C-Aの小ロンド形式の形状をしておりますが、各部の独立度がかなり高く、関連はさほどないと考えてよいかと思います。
少し細かく言いますと…
- A:ヘ長調 Lento 8小節×2
- B:ニ短調 4+6小節
- A:ヘ長調 Lento 8小節
- C:変ロ長調 10+8小節
- A:ヘ長調 Lento 7+8小節
BとCについて、Cについてはcon animaとありますので、少し生き生きとテンポを速めて演奏する必要があるでしょう。
Bについては?Bについても、伴奏の形からAより速めのテンポで演奏したほうがよいと考えられます。そのほうが各部分の対比もつきますよね。
最後のAの7小節についてですが、終わりの和音は8小節頭に来ております。「構造がいきなりかわったのかな?」と思われるかもしれませんが、終わりと始まりをくっつけちゃった形で、全然違う形になっているわけではありませんのでご安心ください。
各部解析
ロンド主題(Aの部分) 楽曲解析の練習にもいいかも。
この曲の顔ともいえる部分ですね。とても大事です。
赤丸は倚音、青丸は倚和音と考えられます。
倚音は表現上のアクセントを伴う音ですので、とても大切に演奏してください。
また、コードについてですが、この曲はV→Iという動きが多いですね。Iは主和音であり、安定した和音、どっしりした和音になりますが、最初がVということは、運動量、エネルギーの大きな和音から始まるということですので、その点を念頭に演奏するとよいかと思います。
Iの和音は安定、どっしりした和音とは書いておりますが、該当場所に倚音がある場合は、その音は旋律的なアクセントを伴うことをお忘れなく。安定した和音上にあるのに、不安定なアクセントを伴う音がある…結構高度な技術が必要になるかと思われます。
また、この部分、最初は単純なV-Iですが、3,4小節目においては、V - Iの倚和音を伴って小節後半でIに安定。となります。この倚和音はdim7で強烈な不協和音でもあるため、ここについては和声的なアクセントを持ってくる必要があります。となると1,2小節と3,4小節で頂点の持って行き方が異なります。4小節目については、4拍目で安定し、1拍目はもっとも不安定ですので、4拍目頭に頂点を持ってくるように演奏する必要があるでしょう。
ここについてはAの部分で最も表現上のアクセントが必要な部分ともいえるでしょう。
Iの和音の第二転回形でよくみられる機能
後半についてはIが最後にしか出てきません。I2です。これちょっと書き方おかしいのですが、Iの第二転回形と思ってください。Iの第二転回形とV(7)が続く場合はIの第二転回形はV(7)の倚和音と解釈して、同一の機能とみなします。
Iの第二転回形のベースはV(7)の和音と同じというのがポイントです。そのためIの第二転回形+Vと続く場合は、両方でVの機能とみなします。
なので、この部分については、Iの和音だけれども、Vとして解釈するというのが重要です。Iの和音だけれども安定させて弾いてはいけないということです。
このIの2転ーVの和音ーIの和音という和声はほんとーうに、よーく出てきます。曲を納めるところで、頻出です。
覚えておくと応用ができて、大変よいと思います。
倚音については、こちらの記事をご覧ください。
B部分 I(トニック)とV(ドミナント)のシーソーゲームが肝
短調に転調し、情熱的な部分ですね。
Vの和音のところに、フレーズの頂点があるようなイメージです。
1,2小節は小さな波、3,4小節で、少し大きな波。
5,6小節は1,2小節と同じような感じになります。
5,8,9,10小節に関しては、3,4小節を拡張しておりますので、さらなる頂点が必要です。
この8,9小節と10小節のカデンツァはなくても成立するものです。
がこれが挿入されているということは、B部分のハイライトを形成しているということです。8,9の繰り返しで盛り上がりを作り、10の音域の広いA majorコード(ニ短調のドミナントコード)を豪華にならしカデンツァを華やかに演奏するとよいでしょう。
Cの部分 ポイントに配置された倚音に注目
大人っぽい情感ある部分ですね。情熱的なものをウチに秘めて演奏するのがよいと思います。
赤丸で囲んだところが倚音の箇所です。ここについては、すべて<>で示されているので持って行き方がわかりやすいですね。
半音でコードが変更するところが多いですが、この部分に関しては、到達点をイメージしてやるとよいと思います。
例えば1,2小節の、F、F♯、Gのところなんか、2小節あたまへ向かって、若干cresc.するような感覚で演奏するといいでしょう。
ここには載せてませんが、後半のベースラインで、前半と違いがあるところについては、進行感をより強く持って、盛り上がりをつくるのが良いかと思います。
この部分、前半とても盛り上がるのですが、後半はちょっと短く物足りないかな…と思うような構造ではあります。もうひと山あってもよかったかなと思わなくはない。
Cの最後の部分です。囲った部分ですが、和声が16分音符単位で変わりますので、ここは若干ルバート気味で、時間をとったほうがよいかと思われます。「遅くする」という意識でやるのではなく、「個々の和音とその移り変わりを堪能できる程度の時間が必要なため、少し遅くなる」というイメージで演奏するとよいかと思います。
最後は讃美歌の終わり方
最後は基本的にpの音楽ですので、美しく、かわいらしく演奏するのがよいかと思います。
最後の2つの和音はIV-Iで俗にいう「アーメン終止」というやつですね。讃美歌の終わりにつくものです。
落ち着いて美しく曲を納めてください。
技術的なポイント
この記事で、花の歌について触れておりますので、よろしかったらご一読ください。
Aの部分 最初に登場する難関ポイント伴奏の3連符
最初の伴奏形の3連符はかなり難しいです。コツは左手の重心移動ですね。3連符の2つ目の音にすぐに映れるように、1つ目の音を演奏している時点から、重心を右にすぐ移せるようにするのがよいかと思います。2つ目の音は4ないし、3の指が候補でしょうか?4の指の方が重心移動のしやすさと2小節目の伴奏形で考えていいように思います。
右手のアルペジオについても解釈と表現が案外難しいと思います。リンク先の記事でも触れていますが、旋律線が誤解されるような弾き方はしないようにした方がよいでしょう。具体的に言うと、内声を担当する部分は大きく弾きすぎないほうがいいと思います。
Bの部分 旋律と伴奏を右手で一緒に弾くのは難しい
右手で旋律と伴奏を両方担当しますね。片手で伴奏と旋律両方を担当するのは愛の夢でも出てきますね。
なのですが、愛の夢と比べると花の歌の方は格段に平易であると思います。
と言いますのも、旋律と伴奏を同時に演奏することはなく、交互になるので、切り替えがしやすいですね。
一点気を付けるとしたら、伴奏形が16分音符で区切られていますが、フレーズが小さくなり過ぎないように捉える点でしょうか。
Bのカデンツァは書いてある通りに演奏すれば問題ないと思います。
音量がが凸凹しないようにだけ気を付けてください。
Cの部分 カデンツァは指示を理解しつつ自由に素敵に!
左手の伴奏形の跳躍が若干難しいかもしれません。まずは、繰り返し練習して慣れちゃいましょう。
Cのカデンツァについては、指示をよく守るのが大切かと思います。
- a piacere 速度の意味で、奏者の任意に自由に
- rit. だんだんゆっくりに
- cresc.だんだん音量を増やす
- riten. 直ちに遅く
ラスト ショパンへの道!? 連続3度の練習!
ラスト8小節にある、右手の3度の連続ですが、これできるようになっておくと、後々もっと難しい曲が出てきたときに役立つでしょう。
ショパンのエチュードの25-6とかね…(くそむずいですが…)
ちなみに、該当箇所はこちらです。
この曲の3度はメゾスタッカートがついておりまして、レガートでやるよりは気楽に取り組めると思います。
指については指番号が振ってある場合はそれを参考にしてみてください。
装飾のEは5で固定でしょう。となると、ラスト2つは必然的に24と13でしょうか。最初も12で固定ですかね。となると次は13かな、残り2つは12、13とするか24と13にするかでしょうかね…
ラストの分散和音ですが、最高音の小指の音、旋律の音をちゃんと聞かせられるように気を付けるのがポイントです。
楽譜の入手方法
有名な曲なので、全音ピアノピースにもちろんあります。
A~F難度のうち、下から2番目のBです。
妥当かな?Cでもいいかも。くらいでしょうか。