POPSにも果敢にチャレンジ!クラシック作編曲家 田丸和弥の音楽日記

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リスト 愛の夢 第三番を解析

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今日は、超有名なピアノ曲、フランツ・リスト作曲の「愛の夢第三番」のアナリーゼ(解析)なんてものをしてみようかと思います。

ピアノを習ったことがある人ならば一度は弾いてみたい曲!ではなかろうかと思われます。現にさらさら弾いている方もたくさんいらっしゃるでしょうし、これから弾いてみたい!という方もいらっしゃるでしょう。

かくいう私も、最近、珍しく人前でピアノソロを弾くなんてことがありまして、その時の曲がこれだったんですねー。

 

ということで、演奏の参考や、「へー」的な視点をお届けできればと思っております。

あくまで、私の個人的見解ですので、参考程度に考えてくださいませ。

 

追々拡充予定…

 

 

リスト 愛の夢 第三番を解説・解析(アナリーゼ)してみる ピアノ 弾き方

基本情報(拍子、調性、構成など)

4分の6拍子、変イ長調(♭4つ)、基本的に同じテーマを調性アレンジを変えて3回演奏します。変奏曲形式なのか?いや、ただ、最初と最後は調性の面、旋律の形などから、主部と再現とみなしてもよいかと思われます。となると三部形式になるのでしょうか?

ちなみに、主調の変イ長調はもっともロマンティックな調性だと私は考えておりまして、この曲にとてもふさわしい調性ではないかなと思われます。

細かく分けるとこんな感じでしょうか。

 

  • 第一部(主部):a(6小節) + a'(6小節) + b(4小節) + c(8小節) + カデンツァ(2小節)
  • 第二部(中間部):a(6小節) + a'(6小節) + b(3小節) + a''(6小節) + aによるブリッジ(2小節) + a'''(9小節) + カデンツァ(2小節)
  • 第三部(主部再現):a(6小節) + a'(10小節) + a''(2小節) + a'''(2小節) + d(2小節)

 

通常、4、8小節で組まれることの多いテーマが、6小節で構成されているのが特徴的ですよね。4+2といったつくりで、気持ちが盛り上がって盛り上がって、でも、いや抑えよう…みたいな表現をしているのかな?なんて思っております。

後半は4、8小節の構成になっているのも興味深いです。前半との対比と言えるでしょう。

 

各部分の主調は

第一部:変イ長調

第二部:ホ長調

第三部:変イ長調

といった感じではあるのですが、とても一時転調(借用)の多い曲で、色彩豊かですよね。

例えば、ここの部分

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旋律はすべてE音なのですが、C major、a minor(ここまではC majorの和音と考えて差支えないかと), E majorの和音となっております。読譜苦手な人には鬼門かもしれませんが、とても情感のある部分ですよね。心の揺れ動きを表現しているのではないでしょうか。

 

Abを中心に、E、Cの三度調をポイントに据えている曲です。


 

倚音を大事にしましょう

旋律の要となる場所、情感を込めるべきところに、出てきます。

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5小節目、4拍目は倚音(同一和音の小節に見えますが、前半はEb上のFm、後半はEb7とみなすべきかと思います)

もっと、情感を込めるべき4小節目頭の音も倚音(?)かなと思うのですが、復元解決でないので、自信がない…

でも、この2つは大事です。その前、3小節目4拍の刺繍音も大事ですね。

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ここは典型的です。和音が切り替わる部分で、かつ和声音がCbのところDbへ行ってますよね?さらに、アクセントもついてますね。

とても大事です。心の揺れ、のようなものを表現してみてください。

 

技術的なポイント

自分で演奏していて、ここが勘所かな?と思ったところを徒然にかいてみます。

第一部の旋律を目立たせるのはなかなか難しい

と言いますのも、旋律が内声にあるんですよね。配置的には最上声に旋律が来ているのが一番聞き取りやすいです。次点はバス。外声は聞き取りやすいですね。その点旋律が内声にあるこの曲は、ちょっと強調してあげないと、プラス、右手のアルペジオを控えめにしないと旋律が埋もれてしまいがち。

もう一点、難しいのが、右手と左手の連係プレイ。

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旋律が右手と左手で行ったり来たりしておりますが、これをちゃんとフレーズがはっきりわかるように演奏するのはなかなか難しいです。

イメージ的に、最初は、旋律構成音は「f」その他の音は「p」くらいのつもりで、弾くのをお勧めします。そうでないと、両者をはっきり区別できるようにならないかと。

音強の差をどの程度にするのかは、それが「できるようになってから、調整する」でよいかと思われます。

第一部後半のぺダリングも難所の一つ

左手に分散和音がある場所が特に注意ポイントです。

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特に、1つの小節でコードが変わる部分は集中力が必要です。この部分は小節前半と後半で、半音違いのコードなので、踏み分けは必須です。(でも、この半音の違いが揺らぎを生み、心の揺れ動き、不安、なんかを表現しているのではと思われます。肝ですよ~特に4拍目は倚音と取っていい音です。)

ちなみに、分散和音で書かれていない箇所も多いですが、手が大きくないと難しいか無理…
左手のベース音は前だしすることになると思いますが、そうなった時にベース音の保続ができるタイミングで、かつ、前の小節のペダルを残さないの2つを両立する必要があると思われます。

前者はベースの響きは不可欠であること、後者は前の小節と和音が異なるので、濁ってしまうのを防ぐためです。

 

蛇足:上の段三小節目1拍と下の段1小節目1拍目、実は同じ和音で、本来はそう書きたかった部分だと思われますが、なぜ、前者が♯で後者が♭で書かれているかと言いますと、前後で転調をしているからですね。

本当は上の段も♭で書きたかったところだと思われますが、その前の♯系からの関連を示すためにこのような表記になっております。エンハーモニックチェンジというやつでしょうか。

 

第二部の旋律も案外難しい

旋律が最高音に配置されていて、目立つ要素はあるのですが、右手で旋律と同時に伴奏も担当しなければならないため、小指をメインで使って旋律を演奏する必要があります。

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小指は力が弱く、音も弱くなる傾向がありますので、ここも旋律を聴かせるように意識しましょう。

また同一の指で弾く場合でもフレーズをつなげるように意識する必要があるでしょう。

左手のベースの半音下降も素敵ですよね。また、下がりきったところ(この図の下の一番左の小節)で、最高音と最低音の幅が大きくなり、かつ旋律が第9音。倚音的な効果があります。最初6小節におけるフレーズの頂点(?)はここへ持ってくるとよいかと思います。(ほかの部分の同様の箇所も同じように処理するのがよいと思います)

ついでに、緑の線で囲ったところですが、コードが変わるので、3拍目、4拍目でペダルを踏みかえ(ソフトペダルは検討の余地あり)が必要です。

 

倚音視点でも、下段2小節目の4拍目は前で取り上げたのと同じですが、下段3小節目1拍も倚音です(B majorの和音上のC♯)。なので、誤解を恐れずに言えば、ここでは、この3拍目の倚音に向かってわずかにcresc.をして、3拍目の頭を頂点に持ってくるのがよいと思います。(ただし、すぐに引っ込めて)大きなフレーズで見た場合の頂点ではないので、やりすぎ注意です。

ハ長調の6度と5度の転換は結構なトラップ

第二部のbの部分に入る直前ですね。左手で6度と5度の組み合わせを演奏する部分がありますが、ここは結構な音はずしポイントです。何を隠そう自分もよくやっちまいます。

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というのも、指の間隔の問題でやられます。ド↓ミとミ↓ソの(6度)間隔と、ソ↓ドの(5度)の間隔が異なるため、ソ↓ドの時に指の間隔を狭めないといけないのですが、それがけっこう難しいのです。定着させましょう。。。

 

 

それに加えて、ハ長調である=演奏するのが白鍵ばかりであるというのが挙げられます。

白鍵ばかりだと全部平らなので、さわっただけでは黒鍵より一体どの音なのか判断がつきにくくなります。また、手の形状からいって、白鍵ばかり弾くのは黒鍵が適度に含まれているよりも難しくなります。

どこが6度でどこが5度なのかをちゃんと染みつくように練習するのをお勧めします。

 

そう、ピアノあるあるなのですが、ピアノのハ長調は弾きにくいとされています。というのも手の形を自然な状態で弾けるには黒鍵と白鍵が組み合わさっているのが良しとされています。ピアノ曲って、♯や♭がある程度ついている調性、ホ長調、変二長調、嬰ハ短調なんか多いですよね。

それに加え、白鍵は隣の音を弾いてしまうミスが起きやすいとも思われます。黒鍵は隣の黒鍵と隣接していませんが、白鍵は全て隣接しておりますので…

 

はい、また倚音的視点。

上段2小節目、4拍目も倚音です。ここは転調するポイントである、後半の盛り上がりへの架け橋である点から、割と強めに情感の観点でのアクセントをつけるべきかと思います。

 

今度は女性リズム的視点。

下段2小節目の1拍目。これは倚音ではない(ただし、倚音を修飾したものととらえることは可能かと思われます)のですが、小さい単位で見た、フレーズの終わりのリズム形が女性リズムになっておりますので、この第一拍は情感のアクセントをつけて弾くべきでしょう。アーティキュレーションの指示がなされていますが、これがなかったとしても、そう弾くべきでしょう。

 

第三部も旋律を目立たせるのはそこそこ難しい

第二部と同様の理由です。また、もう一点、旋律と伴奏が同じ音を演奏する部分、ここも難しいですね。

例えば、これ。

 

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このEb音は旋律かつ伴奏の音の両方の意味がありますが、旋律としてわかるように演奏する必要があります。ようは伴奏より大きな音量で演奏するということです。そうでないと旋律として聴こえませんよね。

 

ベース音を残しつつ濁らせないぺダリングのポイント

第三部には一か所、ぺダリングのものすごく大事なところがあります。

ここ

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いや、正確ではなかったかも。手が大きい方には無関係かもしれません。

手の小さい方。ベースのE♭の響きを残しつつ、4拍目からは内声のGを弾かないといかんわけです。

このG音、導音でして、解決感を出すためには、「弾かない」という選択肢はないかと思われます。右手にGがあるとはいえね。

なのですが、この小節は拍頭でペダルを踏んでも、4拍目でコードが変わってしまう(しかも、半音違いコードである)ため音が濁ってしまいます。

また、4拍目以降でEb音がないというのも問題です。というのもコレ根音なんですよね。 

 

解決方法を2つ提示してみます

  • ハーフペダル
  • 3拍目裏で踏みかえる

 

ハーフペダルはうまく使えれば、拍頭のEbは弱くなりはするものの残しつつ、不協和度を下げることができるでしょう。

 

3拍目裏で踏みかえるのは、タイミングがシビアですが、冒頭のEbを3拍目裏まで弾いたまま一瞬でペダルを踏みかえることで、この音を持続できます。かつ、3拍目裏のタイミングで踏みかえることで、不協和の原因となるF♭音をミュートすることができます。

ただし、3拍目裏で響きが一瞬なくなるような違和感が生じるのも確かです。

 

ということで、最強なのは、「3拍目裏でハーフペダル」でしょうか。ソステヌートペダルを検討してもいいのかも。みなさん納得いく方法を是非追求してみてください。

 

ちなみに、この部分の和声ですが、3拍目までは、Ebの保続音上にDbdim7(減五減七の和音 全ての音程の間隔が短三度で、転回しても関係が変わりません)の和音で、4拍目以降はEb7の和音となります。

3拍目までに存在するFbはEbが転位したもの(倚音とみなしてよいかと思います)なので、4拍目の解決音をもったいぶらせる効果です。

ちなみに、旋律のCも倚音です。アクセントもついていますし、ここは情感たっぷりに!

 

蛇足

この最後ですが、もうお気づきの方も多いかと思いますが、旋律を短く縮めたものです。

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残り香、リフレインという感じで、名残惜しさ、みたいなものを表現してみてはいかがでしょうか?

 

実演動画

大分昔に弾いたんですけれども、ここで書いたことあまりできてないかも…

ということで、晒します。反面教師としていただければ... 

www.youtube.com

 

楽譜の入手方法

これだけ有名な曲ですので、全音ピアノピースにありまーす。

難易度設定はA~Fのうち上から二番目のEです。

体感的に、ただ弾くだけならばDくらいかなと思います。D難度のワイマンの銀波とかのほうが難しい気がします。

読譜は転調が多くてやや難しいかも。

綺麗に弾くのは難し目。と考えるとE難度は妥当なのかな?

しかし、ラ・カンパネラがE難度なんですよね。激難しいのに意味不明。

ピアノピースー026 愛の夢 第3番/リスト (全音ピアノピース)

ピアノピースー026 愛の夢 第3番/リスト (全音ピアノピース)

 

 

原曲は歌曲です

歌を見つけました。日本語歌詞でうたってらっしゃいます。

www.youtube.com

原曲の歌詞は「O lieb, so lang du lieben kannst!」

「おお、愛しうる限り愛せ!」という意味だそうです。

 

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