クラシック作編曲家 田丸和弥の実践・実体験・実験・音楽日記

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リスト「ラ・カンパネラ」の楽曲解析1~主題の変容を詳しく見てみた~

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『パガニーニによる大練習曲』第3番 嬰ト短調

 

ラ・カンパネラ - Wikipedia

 

全6曲からなる練習曲の第3番に当たります。

このリンク先をご覧になったらわかるかと思いますが、ラ・カンパネラと呼ばれるものはいくつか版があるのですが、一番有名なのはこちらかと思います。

 

何回かに分けて、楽曲の解析や(技巧というよりは、音響や楽曲解釈の点に沿った)弾き方のポイントを書いてみようと思っておりますが、初回となる今回は主題の変容についてです。

 

この曲は「超絶技巧」で有名ですが、今回は技巧ではなく、主題がどのように少しずつ姿を変えながらクライマックスへ向かうのかに注目してみます。

 

リスト「ラ・カンパネラ」の楽曲解析1~主題の変容を詳しく見てみた~

 

 

 

基本情報

今回は、この楽曲について書く最初の記事となりますので、基本的な情報を少し書いてみようと思います。

 

作曲者:フランツ・リスト

調性:嬰ト短調

拍子:8分の6拍子

速度標語:Allegretto

形式:ロンド形式?変奏曲?

 

中級までくらいの方が初めてみると面食らう譜面であると思います。

例えば...

  • 調号にシャープが5個ついている
  • ダブルシャープ(存在は知っていても、頻繁に遭遇するものではない)
  • 数字の書いていない連符
  • 1小節が1段に収まっていないこと
  • 大量の32分音符

と、上級者への階段へチャレンジするものへの洗礼を浴びせてくれる楽曲には間違いないでしょう。

 

主題の変奏比較

この楽曲の形式が何なのかについては一旦置いておきますが、「主題の変奏を繰り返して楽曲が構成されている」という事実は楽曲の解釈と演奏において大事なことかと思います。

ということで、今回はこの主題の変容を細かく見てみたいと思います。

 

比較のためにこの楽曲の各部分について、便宜上以下のように定義します。

 

序奏
主題
A → A1 → B → A2
変奏1
A3 → B1 → A4
変奏2
A5 → B2 → A6
コーダ

 

ちなみに、大雑把に言うとこんなイメージで変わっていきます。

A
主題提示
A1
装飾が増える
A2
幻想的になる
A3
三連符になる
A4
32分音符・高音化
(ここまで効果音的装飾)
A5
旋律装飾へ変化
A6
オクターブ化・ff

 

では、変容を見てみましょう。

 

主題

提示(A)

ラ・カンパネラの主題

この譜例の上段の上向き符尾(八分音符)が本来の主題であり、最初の登場時点からすでに装飾されています。

伴奏は中音域のアルペジオで、淡く、実態を持たないような浮遊感のあるような書法が特徴です。

確保(A1)

ラ・カンパネラの主題の変奏1

主題自体に装飾が付き、伴奏の音域とリズムの変更がなされて響きが豪華になります。

主題(A)よりも実体化し、やや現実的ともいえる安定感を持っています。

再現(A2)

ラ・カンパネラの主題の変奏2

右手のD#が音域的に主題を取り囲むように上下して飾ります。

音域や書法に再度浮遊感が生まれて、提示部分のように幻想的な雰囲気を持っていると考えます。

 

変奏1

提示(A3)

ラ・カンパネラの主題の変奏3

主題の装飾が16分音符から16分音符の3連符になり細かくなることで、より華美になります。

また、伴奏形がズンチャッチャに変形されて間がなくなり、主題の確保よりもより一層安定感を増します。(主題の確保は、3,6拍に間があったがそれが消失している)

 

再現(A4)

ラ・カンパネラの主題の変奏4

音符が16分音符の3連符から32分音符へとさらに細かくなりますが、より一層高音域へシフトされ、この主題の変形としては一番繊細な部分であると考えます。

この部分の高音の装飾は32分音符で書かれてはいますが、トリルのように演奏する意図があるのではないかと感じており、これ以降の32分音符とはやや意味が違うのではと私は思っています。

 

変奏2

提示(A5)

ラ・カンパネラの主題の変奏5

引き続き32分音符による細かい装飾の部分ですが、装飾がD#の連打ではなく、旋律の1オクターブ上の音とその2度上の装飾音に変形されています。(この装飾についてはB1の一部ですでにあらわれた形ではあります)

D#の連打は、旋律とは独立した効果音としての装飾に近いですが、このセクションでは旋律の装飾となっています。

左手は変奏1の提示(A3)と同じリズムですが、ベースがオクターブ低く拡張され、内声に構成音の変更がもたらされることで、さらに豪華になります。

そろそろクライマックスが近い感じがしてきますね。

再現(A6)

ラ・カンパネラの主題の変奏6

最後に現れる主題の変形です。

音価は16分音符となり時間当たりの音数自体は減るのですが、音強の指定と、オクターブという強い音性によって、一番堂々として力強い変奏となっています。

左手のリズムは呈示のリズムを分割することによって、さらに派手になります。

 

変奏のスタイルは装飾的なもの

ラフマニノフ作曲の「パガニーニの主題による狂詩曲」のような主題操作(簡単にいうと主題の変形。ある時には、ぱっと見や一聴したところ原型をとどめないが実際は関連がある)があるわけではなく、主題を華麗に装飾していくスタイルで、ショパンの「ノクターン9-2」やバタジェフスカの「乙女の祈り」のスタイルに近いと思います。

主題の提示の時点で華美であるという点はこの曲の特筆すべき点であるかもしれない。

 

ただ、比較的変奏技法がシンプルなこの楽曲がこんなにも人々を魅了するのは、頑なまでのストイックさの技巧追求とそれによってもたらされる格好良さなのだろうと思う。

トリルや装飾音符で飾り付けをし、激しい跳躍や手の交差、同音連打や同時発音数の多さ、ペダルによる残響を生かした音域変更などなどすべての事柄が、豪華絢爛になるように書かれている。

 

リストのリサイタルでは彼のファンの女性たちが演奏している姿をみて失神するほどだったという逸話があるようですが、この楽曲はそれを想起させるものの一つ。なのかもしれない。

リスト本人を見たことは残念ながらないし、それは絶対にかなわないことではあるが、本人がひいている姿が目に浮かぶようです。

 

2026年8月2日追記:続きの記事

www.petit-orchestra.jp

 

おまけ1:ロンド形式か変奏曲形式か

なお、この楽曲はABABABA+コーダという形のロンド形式の一種に当たるそうです。

ロンド形式というとわたしはABACAやABACABAという、エピソードにBやCという異なるものを挟むものを指すのかと思っておりましたが、間に挟まるものが変更するということよりも、主題でサンドイッチ状態になることの方が本質的なようで、この曲はロンド形式といえるとのことです。

 

ただ、私は変奏曲の一種なのかなと考えておりました。

私のとらえ方としては、ABA(厳密にはAABA)+ABA(バリエーション1)+ABA(バリエーション2)+コーダだと思っておりました。

ABAの最初のAと最後のAがすでに別物である点がいわゆる変奏曲と比べると異質かと思います。

 

おまけ2:幼少期の小話

ピアノよりドラムとかエレキギターのほうが格好いい、と申しておりました父が「この曲を弾けたらすごい」と言っていた楽曲であります。

 

何かの映画で見たのだと思いますが、超絶技巧と曲調に惚れたのかもしれません。

 

かくいう私も、子供の頃買ってもらったレコードの中に入っていた楽曲でして、あこがれの一曲でありました。

 

そのレコードの思い出はこちら

子供の頃の愛聴レコードの記憶 - クラシック作編曲家 田丸和弥の実践・実体験・実験・音楽日記

 

ちなみに、レコードでしかないようで、いつまで残っているのかわからないですが…こちらのサイトで販売されているレコードです。

 

3歳から6歳のためのホーム・ミュージック / /V.A. レコード通販「おミミの恋人」

 

レーベル名はSEVEN SEASというらしい。

アーティストは何組か覚えておりまして...

レオンポップス、ウィーン少年合唱団(菩提樹だったかな)、ヤン・ホラーク(愉快な鍛冶屋etc)、など。

そのなかに、園田高弘さんがラ・カンパネラの演奏者として記載されており、覚えておりました。印象深かったのだと思います。

 

全然、うまくはなかったけれども、自己満レベルとはいえ、ある程度弾けるようになって、うれしい楽曲ではありました。

 

 

 

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