POPSにも果敢にチャレンジ!クラシック作編曲家 かずまるの音楽日記

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大地讃頌を解析してみた~演奏のポイントなど~

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大地讃頌と言えば、卒業式で歌われたり、校内合唱コンクールで歌われたり、現代の生徒さんにとっても親しみのある歌ではないでしょうか?

 

その割には、なんかちょっと難しくない?

 

と思われるかたもいらっしゃるのではないか。

 

そう思い、本記事を書いてみました。

 

ちなみに、分析してみた。。。というととても大げさな感じがしますが、私は音楽に多少の造詣はあるものの、歌は素人です…

ということで、「歌唱の指導」という範囲外でアプローチできる点はないかなと思い、この記事を書いてみました。

 

音楽知識がさほど必要のないポイントからのアプローチに関しては、音楽指導者でなくても(例えば、他教科の担任の先生などでも)ご理解いただける点ではないかなと思います。

 

ということで、まいりましょう。

 

 

大地讃頌を解析してみた~演奏のポイントなど~

 

音楽知識がさほど必要ないポイントからのアプローチ

このセクションでは、音楽知識がさほど必要とされないポイントでできる改善点というかアプローチ方法に限定して述べます。

すなわち、日本語話者の観点物理的な声量などの観点で改善できるポイントを述べます。

前者は、抑揚に欠け言葉が全く入ってこない状態を避けたりしましょうということです。歌は、言葉を伴うのが前提なので、ある程度どんなことを伝えたいのかわかる必要はある。と私は考えています。(ナレーションではないので、音楽的な範囲で可能なレベルある必要はあることは断っておきます)

後者も前者に含まれるのですがやや音楽的な要素も含まれるかなと思います。要は、大事な言葉や、その文章の抑揚を意識して音量の調節が必要だ。ということです。文章の抑揚と歌の抑揚は完全に一致するとは言い切れない場合もありますが、意識することに越したことはないでしょう。

 

言葉が聞こえるようにしよう。(区切り位置を意識する)

タイトルの通りですが、聞き手になんと言っているか通じるようにしよう。ということです。空耳防止は案外馬鹿になりません。

 

特に、意識すべき点は以下の部分です

  •  よろこびは、ある (yorokobiwaruと聞こえがち)
  •  その立つ、土(その他、ツツチ(?)と聞こえがち。ツツチってなんぞ…)

改善ポイントは簡単で、歌詞の意味を理解しながら歌うことと、ちゃんと言い直しましょうということです。

これだけでも、一段レベル上の演奏になることまちがいなし(!?)

 

息遣い、言葉の抑揚を歌詞に合わせよう

 ・感謝せよ!(命令形なので、断定し音が長くとも、強く終わる)

 ・文章を意識しよう 

例えば、「人の子ら、その立つ土に感謝せよ」これで、意味が通じるひとまとまりなので、こればぶつ切りに聞こえないようにする必要があります。ぶつ切りに聞こえる要因として代表的なものは、以下のようなものが考えられます。

 ・物理的に無音の時間が長い

 ・抑揚(音の大きさ)が不自然

なので、これを避けるという点に注意するだけでこの点をよくすることができるでしょう。

 

より音楽的な部分に着目したアプローチ

ホモフォニック(和声的)な曲である

和声的な部分が大半を占める曲。すなわち、バッハのような各声部の独立性が高い曲ではなく、讃美歌「慈しみ深き」のようなその時点時点での響きの重要性が高い曲である。

すなわち、各パートの調和がより大切ということになります。

大事なパートはやや多きめに聞こえてもよいですが、特定のパートが突出して聞こえたり、歌い方が異なっていたり、声質があまりに異なっていたり…と調和していない状態だとあまりよく聞こえません。

こういうところは専門の人に見てもらうのが一番手っ取り早いですが、そうでない場合でも、合っているかな?違っているかな?という点に着目するだけでも改善の余地はあるかなと思います。

 

男声に主旋律がうつるポイントを明確に意識すること

この曲、ひたすらソプラノが旋律を歌うんです。ほかのパートで旋律が出てくるところといえば、ソプラノがお休みのところくらいと言っても過言ではありません。

ただ、一か所を除いては。

そう、ソプラノが歌っているにも関わらず、ソプラノ以外が旋律を演奏するという、この楽曲におけるレアなその一か所を明確に意識して歌うと一段レベルアップした演奏ができるでしょう。

その箇所とは、男声に現れる「われら人の子の」の部分です。

そう、一定区間男声が主役を張ります。そこは男声の頑張りどころです。(あぁ、アルト)

 

具体的に言うと35小節4拍目~41小節の3拍目までです。ここまでが男声の見せ場です。

 

それと同時に、もう一つポイントがあって、それがどこかというと、ソプラノに再度旋律がうつる場所「讃えよ讃えよ土を」の箇所です。

41小節目3拍裏から、男声の旋律にかぶさるようにして、ソプラノが旋律を持っていきます。ここは、男声の旋律を受け取るようなイメージで歌うといいかと思います。

 

男声とソプラノ(女声)の連係プレイが特に必要な個所と言えるでしょう。

 

音楽の作り的にもそうなのですが、歌詞のつながりにもその根拠を見出すことができます。

この部分については歌詞の観点からいうと「われら人の子の大地を褒めよ(男声)、讃えよ讃えよ、土を(女性)」とつながっているからです。

 

ちょっと補足です。女性パートの「恩寵の豊かな大地、豊かな大地、大地、讃えよ讃えよ土を」この文字の羅列だけでとらえると「~大地、讃えよ~」の部分がつながらず、意味的におかしいんですよね。男声、女声をまたがった「われら人の子の大地を褒めよ、讃えよ、讃えよ土を」で一連の大きなまとまりであるととらえるのが自然かと思います。

 

吐息をうまく使おうぜ

男声パートの難所の一つとして、先に述べた旋律の部分が挙げられます。

特に取り上げると、二度目の「人の子」の「ひ」の部分。ここピンポイントです。

その理由は、音が低すぎるから。

この「ひ」の部分の音はこの楽曲の最低音F#でちょっとテノールでは考えにくいくらい低い*1、そして、テノールはおろか、バスでも聞こえにくくなりがちな音であり、音量だけでカバーしようとしても言葉が聞き取れない可能性があります。

こういう時はどうするか。

 

吐息を使いましょう。

 

すいません、ちょっとふざけました…

 

もっとちゃんと言うと、子音を立たせるということになるのでしょうか?

具体的には「人の子(Hitonoko)」の「H」をはっきり出すということです。

静かにしようねというときに「しー(SHHHHHHH)」というと思うのですが、それを「ひ(正確にはH)」で行うとイメージしていただければよいかと思います。

音程が聞こえなくてもいいので、「H」の息の音を聴かせましょう

そうすると、ちゃんと「人の子」と聞こえます。

 

音程がさほど聞こえなくてもよい根拠として、ピアノのベースラインが挙げられます。

なんといっても、この箇所、男声の旋律をピアノの左手が補強しているので、音程のサポートは得られていると考えてOKです。

音程と音量はピアノが補ってくれるので、難しい音域の音量を出すことはさほど重要ではない。それよりは、言葉が聞き取れることが大事です。

「H」の息遣いを頑張りましょう。

 

2度目だけきこえるのもおかしいので、1度目も同じようにすべきでしょう。

蛇足として、また、人の「ひ」はしゃべり言葉では無声化していることも考慮に入れるべきでしょう。

 

 

ピアノが補ってくれるとは言え、さすがに誰もその音を出さないのはあまりいいとは言えないので、出せる人は息+その音を出すのも頑張ってみてくださいね。

 

 

とり止めなくなってしまいましたが、本編は以上です。

 

これ以降はおまけですが、よかったら進めて読んでやってください。

 

おまけ1、大地讃頌は「土の歌」の終曲である

大地讃頌は、実はこれ単一の楽曲ではなく、全7曲からなる合唱とオーケストラのためのカンタータ「土の歌」の終曲であります。

なので、実は、この曲だけに、また、この曲の歌詞だけ着目しても、なぜこのように、大地を讃えよ、という歌になったのかはわからないと思います。

 

より深く理解したい方は全曲聞いてみるのをお勧めします。

 

なお、かなり壮大な楽曲であり、日常的な、愛、恋といったものの感情の揺れ幅みたいなものを歌ったものではなく、もっと人として、俯瞰した歌のように感じます。

わかりやすい感情を込めて歌う歌ではないかなと個人的には思っています。

(もちろん、内部に包括していていい感情なのですが、そのもう一枚外側の、人知を超えた意思とも呼べるのだろうもの、を意識してもいいかもしれません)

 

私にも全然実感できませんが、何か、そういう存在を思い浮かべてみるだけでも全然違ったものになるんじゃないかなと思っています。

 

 

おまけ2、伴奏のワンポイント

そして、おまけ2です。

 

書いてある通りに弾きましょう。以上。

 

といったら取り付く島もないか(苦笑)

個人的なポイントは2つで、「合唱の響きを邪魔しないペダリング」と「旋律を演奏する」でしょうか。

 

 

合唱の響きを邪魔しないペダリング

要は和音の切り替わるポイントを意識しようということです。

 

そしてそのポイントは、なんと、最初の小節からあります。

 

1小節4拍頭と4拍裏や、4拍裏から2小節目などが該当します。

 

1小節目は基本的にBの和音なのですが、4拍目裏については歌に合わせて、F#7/Bとなっています。

なので、4拍頭の響きが4拍裏に残らないようなペダリングが必要かと思います。4拍頭の響きが4拍裏に残ってしまうと、歌を邪魔してしまいますので…

 

ペダルの深さについては、ピアノの個性や、会場、歌とのバランスもありますが、完全に踏み直さなくてもBの音が弱くなっていれば、浅く踏み直す程度でもよいかもしれません。

音楽の流れは途切れさせず、しかし和音ははっきりと切り替えるというのがピアノ奏者の腕の見せ所ではないでしょうか。

比較的ずっとレガートであるべき曲調ですし。

 

また、ペダルと同様に大事なのは、ベースの音を音価通りに演奏するということです。

1小節目で言えば、左手のBの音はきっちり伸ばしたままにするということです。4拍目裏でペダルを踏みかえたとしても、弾きっぱなしにしましょう。

 

旋律を演奏する~見えない2分音符4分音符を意識する、終わりと開始を意識する~

これは、主に歌の入っていない間奏部分に関するものです。ピアノ伴奏者としての腕の見せ所で気合入りますよね。そんな頑張るあなたへのワンポイントアドバイスは、旋律をちゃんと演奏しようということです。

例えば、間奏の始まる19小節アウフタクトから、右手はすべて8分音符の分散和音で書かれていますが、実は旋律が書かれているのがわかりますか???

 

簡単な見分け方は、アクセントの有無、4和音か否かでできます。

 

すなわち4和音で書かれている部分は旋律なのです。

そういうつもりで見てみると実は、19小節からの間奏で冒頭の旋律のリフレインをしているのがわかりますでしょうか?

(蛇足ですが、冒頭でBの和音だったところ、ここではG#mが鳴るところが感動的だと思うのは自分だけでしょうか?この和音があることで、ピアノがむしろ主役なんじゃないか?とすら思ったり、思わなかったり…笑)

 

三和音のところは(これは実は一貫していますが)主にリズムの補完の役割で書かれているだけで、一番聞かせたいのは四和音のところ、つまり、19小節は二分音符+四分音符+八分音符+八分音符で書かれている。楽譜上は見えないけれども、二分音符と四分音符がある

それを意識されるとよいかなと思います。

 

もう一つの「終わりと開始の意識」については、歌のところで言及した「その立つ、土」に似たようなことで、41,42小節の「讃えよ、讃えよ」のところです。

これ、歌だとまだ切れ目がよくわかるのですが、ピアノの譜面だけみると、41小節の3、4拍という塊と、42小節の1,2拍という塊で弾いてしまいがち。。。

でも、ここについては、こんな感じになっています。

  • 41小節3拍頭はリズム補完の3和音
  • 41小節3拍裏は旋律の開始音(1回目の「讃えよ」の「た」の部分)
  • 42小節1拍頭は小さい単位のフレーズ終了音(1回目の「讃えよ」の「よ」の部分)
  • 42小節1拍裏は小さい単位のフレーズ開始音(2回目の「讃えよ」の「た」の部分)

楽譜引用できなくて、申し訳ないです…

画像で示すとこんな感じかな…

 

大地讃頌 41,42小節 ピアノの旋律のグルーピングイメージ

大地讃頌 41,42小節 ピアノの旋律のグルーピングイメージ

小さいことに思われるかもですが、楽譜をただ眺めるのに、もう一歩進めて読み解くと、こういうことがわかるようになり、実際の演奏にも反映できるようになります。

 

是非、意識してやっていただきたいなと思います。

 

長くなりましたが、それではまたいつかお会いしましょう。

 

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海の詩「海はなかった」のこちらは伴奏に特化した記事を書いてみました。

www.petit-orchestra.jp

*1:もともとはもっと高い調で書かれていたというのは案外有名な話。その調であっても低いけど