トランペットの高音がキツイ…といったときや、トランペット用の譜面をトロンボーンで演奏したい…と言ったとき。
本来想定されているオクターブより、上げたり下げたりすることがあると思います。そんなときに、少しばかり気に留めたほうがいいと思われることについて書いてみようと思います。
なお、楽譜を変更することを推奨する記事ではありませんので、あらかじめご了承ください。
どちらかというと、アレンジをする場合や、作曲をしたときのOssiaを付ける際の一つの考え方でしょうか。
もちろん、技術的な問題や編成の問題で変更せざるを得ない場合は参考にしていただければと思います。
また、なにか新しい試みをしようとしている人には当てはまらない可能性があることも書き添えておきます。
オクターブ上げ下げはOKか?
そのまま演奏するのがベスト
こう言ってしまうと元も子もないのですが、これが真実です。なぜならば、作り手はトータルの響きを考えて作っているからです。
楽譜に代替手段として書かれている場合はもちろんOK
楽譜に書かれているということは、その点を当然考慮に入れられているからです。
例えば、合奏の場合であればその楽器単体に注目するとおかしくとも、他の楽器との相互作用でオクターブ変更をしたとしても相殺されるような関係が書かれていたりします。
旋律を上げるパターンはよりリスク低し、ただし稀か?
ここからは、一般的にそういう傾向の曲が多いという話です。どの曲のどんな場所にも当てはまるものではありませんので、そのつもりでご覧いただければと思います。
たとえば、テンションを上げようと思って、「トランペットの旋律を1オクターブ上げちゃった!」なんてことは比較的良くありそうですが、声部書法として比較的多いケースを構造を加味するとよりリスクは低いと言えるでしょう。
というのも、一般的な楽曲の構造として、旋律が上の声部にまとめられていることが多いからです。
例えば、楽譜を見たときに、1オクターブ上で完全に同じことをやっているパートがあった場合などは、上げても違和感が少ないことが多いでしょう。なにせ元からあるのですから。
そうでなくても、主にリズムと和声補完の役割として書かれた、上声部などとぶつかるケースにおいても、問題は少ないと言えるでしょう。
もしかしたら、配慮をして1オクターブ上を書かなかったケースも考えられます。この場合は、むしろ上げたほうが華やかになったりして良い可能性があります。
ただし、やはり安易にやるのはお勧めできません。例えば、オクターブを上げることによって、その音域の旋律が消えてしまい。2オクターブあった旋律が1オクターブに減ってしまったりすると、旋律が2オクターブに存在することによってつくられていた威力が落ちてしまいます。
旋律を下げる方は若干リスク高し
これも、そういう傾向の曲が多い…という程度にとどめます。ただ、(ベースにある場合を除き)旋律を下げる場合はよりリスクが高いのは事実であるといえるでしょう。
旋律がベースを下回るのは基本的にNG
こういうケースを見ていただければお分かりかと思います。
この画像は、もろびとこぞりての最初の2小節を各声部がきっちり分かれて聴こえるように書いたもの(1、2小節)とごちゃごちゃになるように書いたもの(3,4小節)です。
先に、補足をいたします。
ちなみに、この譜面においては、少々乱暴な言い方をすると上から旋律、ハモり、ベースとなりまして、横方向に3つのラインが引けるのがお分かりでしょうか?
声部の交差というのは、この3つのラインがお互いに完全一度を超えてまたがってしまう状態を刺します。
この図の3の状態は、旋律とベース、および、ハモりとベースが交差していることがわかるでしょうか?
これを踏まえて、この図の通りにピアノで鳴らしてみると、何が言いたいかお分かりになると思います。
最初の1,2小節については、各声部の役割がはっきり聞き取れる状態です。意味がよく通じる書き方になっているとでも言いましょうか。
それに対して、3,4小節に関してはこの役割が聞き分けられない状態になっています。具体的に申し上げますと、3小節目の4拍裏から4小節目にかけてです。
いったいどれが旋律でいったいどれがベースなのかわからない状態になっています。
このため、基本的に声部が交差するのはよくないとされています。例外もありますが、それなりの説得力のある書き方である必要はもちろんあります。
特に、ベースと旋律が交差してしまうのは問題が大きいと言えるでしょう。というのも旋律とベースラインは、どちらも旋律である可能性がとても高いからです。
このような声部が独立した書き方である場合は、内声も旋律の要素が高まりますが、例えば次のような場合は、内声と旋律が交差してもあまり気にりません。
このように、伴奏の内、後打ち要素のような、旋律にあきらかに従属する要素(大事ではないという意味ではありません)で、音程の高低差が少ない場合は、あまり問題になりません。と言いますのも、多少交差したとしても役割が聞き分けられるからです。そもそも、こういったケースでは、旋律とベースは少し大きめに、後打ちは少し小さ目に演奏したりもします。とかいうと、もろびとこぞりてのハモりも旋律よりは小さ目に演奏するのが通例ではありますが、このケースよりは差が少ないとお考えください。
こういった理由により、基本的に上声にある旋律とベースが交差する(ベースラインもほとんどのケースにおいて旋律ととらえるべき要素であり、旋律同士が交差すると言ったほうが適切かもしれません)の場合は悪い結果を生むことが多いので、避けるべきでしょう。
例外としては…
ベース(伴奏)と旋律を担当する楽器の音色が著しく異なる場合においては、役割の聞き分け難易度が下がり、違和感が大分軽減される可能性があります。
たとえば、歌とピアノ伴奏の場合に、歌がピアノの下に潜り込むケースや、歌と器楽の場合に器楽の旋律がピアノの下に潜り込むケースなどにおいては、違和感の少ない可能性があるといえるでしょう。
とは言っても、機能和声に慣れた耳には違和感を覚える可能性があることは書き添えておきます。
ハモりが旋律より上になるのはケースバイケース
というよりも、本来想定されている声部を変更するのはリスクが大きいということです。
例えばこんなケースです。
3,4小節目はもろびとこぞりての旋律とハモりを逆転させたものです。
これを旋律に忖度せずに弾いてみてください。どんな旋律なのかわからなくなってしまいます。
ただ、これもすべてのケースで悪いか…と問われればそうとは言えませんし、むしろ良く使われている手法であったりします。
上ハモりというものはあり
上記ケースの実施例です。J-POPなどでは良く使われる手法ですし、男声合唱においても、バーバーショップスタイルなどで、標準で使われている手法です。
これらに関わらず、例えば吹奏楽でも中低音楽器に旋律を担当させる場合や、最上声部にオブリガートを付ける場合なども該当するでしょう。
ただ、旋律が最上声にあるときよりも、バランスや音色の差をより意識しなければならないという注意点があることは言えるでしょう。
上ハモりはもちろんアリだけれども、禁則に抵触する可能性がある
たとえば、平行移動や平達の禁則の問題です。これは、上ハモりばかりでなく、声部の交換をした場合に発生しうることですので、一応考慮に入れておいた方が良いでしょう。
ただ、禁則とは申し上げましても、絶対に犯してはならない…という類のものではなく、聴いて違和感がなければ問題なし、とされるものが多いことも付け加えておきます。
ただ、聴いて違和感がない…という状態も自信の耳のレベルや経験や触れてきた文化によって変わるということも書き添えておきます。
大切はよく楽譜を理解したうえでやること
これにつきます。ここで挙げたほとんどのケースは、演奏する際に、通常よりもより気を付ければクリアできることがほとんどでした。
では、結局何が問題なのか?と申し上げますと、確かな知識、経験に基づき実施すべきで響きや書法の知識、経験がない状態で安易にやるのは危険であるということです。
何事も、日々勉強を積み重ねるのは勉強は大切だということではないでしょうか。自分の言葉が自分に帰ってくるパターンですね。こりゃ。
たくさん失敗してみよう
ここまで躊躇させるようなことをたくさん書いてしまいましたが、でも、躊躇はせずに、いろいろ試してみるのをお勧めします。
誰しも最初から完璧になんてできませんし、そもそも完璧な状態とはどういう状態を指すのか?と言うのは難しいですよね。ただし、9割の人がにこれは良くないよねと判断する状態というのはあるでしょう。
いろんな回答があっていいと思います。
とりあえず、どんどんやってみましょう。やってみないとわからないことはたくさんあります。
あとから振り返ってみて、あの時のあれは失敗したな…と思えたときは成長している証です。
関連記事
和音の中で、省いていい音、良くない音について。
吹奏楽における各楽器のオーケストレーションについての考察。音域など。
既存の名曲を研究するのは早道です。