うーん、すごく壮大な話題で、端的にまとめるのがそもそも難しいし、自分の中でも確信をもって「こう」と言えるような状態ではなかったりします。大筋を変えることはないでしょうが、補足をしたり、細かいところは随時修正をしていくつもりでおります。
また、概論だけでは、言いつくせず、各楽器毎の考察もシリーズ化するつもりでおります。
後から見返したときに、2019年現在、37歳の私はこう考えたんだ…という視点の記事を残せるのも、勉強になるかもしれないし、面白いかもしれませんし…
ということで、全然まとまっていないのですが、書いてみようと思います。
吹奏楽のオーケストレーション考察
オーケストレーションの知識が演奏のためにもなるのか?
アレンジのためにオーケストレーションの知識が必要なのは言わずもがななことだと思います。しかし、「演奏のためにもなるのか?」という点については、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
でも、私はオーケストレーションの知識は演奏のためにもなると考えます。なぜならば、オーケストレーションの知識を習得するということは、各楽器に与えられた役割を理解することにつながるからです。
作曲家が「この楽器をこの音域に用いた理由は何か?」という事が推測できたならば、その理由に沿った演奏ができるでしょう。
それがわかれば、調和を求められているのか、ソロ吹きが求められているのか、どの程度のバランスが求められ要るのかetc...が自ずとわかってきます。
吹奏楽の楽器の音域
まず、吹奏楽でよく使われる楽器(管楽器およびコントラバス)の音域の目安を記してみます。
各楽器の演奏可能な音域をイメージ図にしたものです。明らかな間違いを発見…現代主流のBar.Saxの最低音はC2です。あと、上の音域(フラジオ音域)はBar.Saxではちょっと難しいかも… Ab4あたりが限界と考えたほうがいいかもしれません。
ちなみに、鍵盤の数はピアノと同数です。吹奏楽の各楽器の音域をトータルしたものは、おおよそピアノの音域と一致します。この音域は人間が聞き取りやすい音域と考えていただいて問題ないかと思います。(厳密には、この図の低音、つまりピアノの超低音域は、何の音を演奏しているのか聞き取るのが難しい音域ではあるのですが…)
色の濃い部分が難易度がさほど高くなく比較的よく使われる音域、色の薄い部分は難易度の高い部分を表しています。クラリネットについては、3種類の色分けをしました。
これは、多分に主観が入っています。人によってはツッコミどころ満載でしょう。例えば、全日本吹奏楽連盟の朝日作曲賞で指定されている音域(楽器を初めてさほど年月の立っていない奏者でも演奏可能な音域)に倣えば、フルートはG6(瞬間的であれば、A6)までに収めるようにとの指示があります。
ただし、フルートのG6~Bb6あたりの音域は、他の楽器にはない重要な音色要素(Ebクラリネットでも演奏可能な音域ではありますが、Ebクラリネットのキツイ音色による圧倒が発生しがちで、多用すべきではないと考えます)であり、演奏は難しくなりますがC7あたりまでは、ここぞというときの選択肢として残っていると便利かなと思います。それ以上の音域はよっぽど特殊な場合以外は避けられるでしょう。
また、載せきれない情報もたくさん、あります。例えば、フルートの低音域については、演奏は難しくないかもしれませんが、例えばクラリネットのfとユニゾンになった場合は、ほとんど聞こえません。吹奏楽のtuttiにおいて、フルートの第一オクターブを使う理由は、音域を拡張したくないが、休ませるよりは演奏させるべき…程度の理由しかありません。
逆のパターンで、クラリネットやトランペットの最高音域はきつく突き抜けて聴こえがちです。
吹奏楽の響きの特徴
説明が煩雑になるのを避けるため(オクターブ毎の役割の想像が容易になるように)に、見出しにおいてはCの音を中心に記しますが、実際はC音でスパっと綺麗に割り切れるものではないことを先に申し上げます。
概論においては、なんとなくの傾向として掴んでいただければと思います。
吹奏楽の特徴C6~C7が薄い
この音域で旋律を担当できるのは、ピッコロ、フルート、クラリネット in Ebあたりになります。C6よりの部分においては、オーボエとクラリネットも参加できますが、C7 側に音域を広くまたがる場合は難しいでしょう。
また、クラリネットの高音はどうしても音色が鋭くなり、悪く言えば耳に障る音になるため、使いどころには細心の注意が必要です。
(たとえば、divisiをして本数を減らすというのは、かなり良い案と言えるでしょう)
逆に言えば、フルートおよびピッコロ(ピッコロはもう一オクターブ上も可能)が(tuttiにおいても)活躍できる音域とも言えるでしょう。
オーケストラはC6~C7も十分に音量が保てる
偏にヴァイオリンの音域の広さに由来します。例えば、2ndヴァイオリンがC5~C6のオクターブ、1stヴァイオリンがオクターブユニゾンでC6~C7のオクターブなんて使い方もできますし、1stヴァイオリンのみ(またはフルートを伴って)でC6~C7の音域のみで旋律を演奏するという事が可能です。
たとえばこんな譜面。
ドヴォルザークの交響曲第八番 第四楽章の一部です。スコアを見ていただければお分かりかと思いますが、この区画をずっと旋律を担当しているのは、1stフルートおよび1stヴァイオリンのみです。
オーケストラにおける管楽器の扱いは、時代が進むにつれ多様化し、出番も重要度も大きくなってきましたが、もともとは弦楽器が主となって構成される合奏体で、管楽器の人数が吹奏楽とは大きく異なるため、そのまま適用するのは難しいでしょう。
例えば、この楽譜をそのままトランスクリプションするとしたら、この音域を担当できるのは、ピッコロ、フルート、クラリネット in Ebあたりのみです。
良くあるバランスの編成の吹奏楽でこの楽器のみで旋律を担当させた場合は、旋律が明らかに弱くなってしまうでしょう。おそらく、この1オクターブ下の音域も上手く使って、アレンジしないと難しいでしょう。
ということで、オーケストラの高音域の旋律をそのまま吹奏楽に適用しようとすると、参戦可能なのは、ピッコロ、フルート、クラリネット in Ebあたりになります。C6よりの部分においては、オーボエとクラリネットも参加できますが、音域を広くまたがる場合は難しいでしょう。
また、クラリネットの高音はどうしても音色が鋭くなり、悪く言えば耳に障る音になります。
ヴァイオリンの高音も耳に来て嫌という方もいらっしゃるでしょうが、クラリネットほどまっすぐにカーンと飛んでは来ません。
オーケストラ編曲の1つの難しさはこの音域に存在する旋律の扱いにあると言えるでしょう。
吹奏楽のC3~C5は厚い
図を見ていただければお分かりかと思いますが、この音域を担当できる楽器がとても多いです。
クラリネット、バスクラリネット(吹奏楽では高音はあまり使われない印象ですが)、ファゴット(バスクラリネット同様)、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックス、ホルン、トロンボーン、ユーフォニアムなど。
木管楽器の高音による旋律の中心はC4~C6周辺
木管の主戦力となるクラリネットや、オーボエ、ソプラノサックスあたりが得意な音域です。上の方についてはフルートが、下の方については、アルトサックスやテナーサックスも演奏可能です。
金管楽器の高音による旋律の中心はC4~C5周辺
主にトランペットが得意な音域です。C5周辺というのは少し狭く、実際はF5、G5あたりまでは、カバーできます。アルトサックスも同じ音域を担当できます。(ただし、アレンジのスタイルによって、トランペットと同様の音域を担当させることもあれば、そのおよそ1オクターブ下の音域を担当させることもあります。後者についてはクラリネットの1オクターブ下を補強したり、ホルンや低音のクラリネットと絡む場合などに使われます)
高音域の新しい音色要素としてのオーボエの可能性
経験の浅い人向けの音域表を見ると、オーボエの音域はC6より低い音域に設定されていたりしますが、実はC6より上の、F6あたりまでは、頻発させさえしなければ使用できます。ここの音域をフルート以外で補強しようとするとクラリネット族一択になりがちなのですが、オーボエを補強(というよりも音色変化の)選択肢として使うのはお勧めです。オーボエの超高音域は一般に弱いと言われていますが、鳴らし方によっては案外聞こえます。
また、クラリネットほど耳に障らずに音色を変更することが可能です。検討の余地ありです。
(ただし、あまりに多用するのは、奏者の負担が大きいのと、やはり耳に障るので、お勧めしません)
そもそも、高音域を多用せずにアレンジするのがお勧め
ぶっちゃけてしまった感じですが、吹奏楽は吹奏楽の得意な音域で書くのが良いと思います。
オーケストラは高音の単独の旋律も問題ありません!とは申しましたが、そもそも、高音域がガンガン聴こえるのは、耳に障るもので、オーケストラにおいても、常に高音域が使われているわけではありません。
ということで、クラリネットやトランペットが得意な音域を中心に旋律を置く書法を取るのが良いでしょう。
高音を補強する手段として、フルートやピッコロをうまく使うのが良いかと思われます。フルートはクラリネットとユニゾンでもよいし、1オクターブ上を補強したり、飾りを演奏してもよいでしょう。
ピッコロは1オクターブまたは2オクターブ上を担当するのが良いでしょう。
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各楽器についての記事(準備中)
ファゴットの可能性について触れた記事。
バスクラリネットの可能性について実際の使用例と共に解説した記事。