今日は冷えますね。こんばんは。
始めたばっかりですし、連投してみます。
サックスで「和」を描いた曲「盆栽」おすすめサックスアンサンブル
昨日とは打って変わって、クラシック…というか、和テイストのアンサンブル曲を貼ってみます。
サックス四重奏のための組曲「盆栽」(田丸和弥)
第一曲「直幹の五葉松」
第二曲「多幹の蝦夷松」
第三曲「満開の直幹の桜」第四曲「吹き流しの黒松」
第五曲「箒立ちのケヤキ」
参考演奏:Brilliant Colors Saxophone Ensembleさん
サックスで盆栽です。
サックスで、盆栽…
サックスで盆栽!?
です!!
ちょっと面白い組み合わせではないでしょうか?和の物を素材に洋の楽器で表現するという…
作曲の経緯
この楽曲はとある「盆栽」のイベントでの演奏を念頭に依頼を受けて作ったものです。
その盆栽イベントとは…「世界盆栽大会 in さいたま」です。盆栽の世界的な規模の大イベントだそうです。そのロビーコンサートにて埼玉県を拠点に活動している「しらこばと音楽団」による初演のために作りました。
(曲の雰囲気に自然に入ってしまっていた可能性はあるにせよ)そもそも和風な曲を作ったことがなく、私にとって初となるチャレンジングな作品でした。
不安を抱えながら作っていた覚えがありますが、でも途中から楽しくなってきたのも事実です。楽しくなってきた感覚が曲中に投影されているように思います。
盆栽とは??? 曲を書くにあたって学んだこと
ちなみに、私、盆栽というものを全く知りませんでした。でも、何にもしらない状態でしったかぶって、イメージだけの中身のない曲を作るのはまずかろうと、少し勉強しました(記事最後の参考文献を参照ください)。
幹の立ち方(まっすぐか、曲がっているのか)、本数(一本なのか、複数本なのか)や、盆栽が表現するものとは?(深い…)など。
盆栽の心とは?鑑賞の仕方
私のない脳みそで学習できた理解によりますと、盆栽とは自然に生える木本の姿を模して作るものだそうで、その思想としては、盆栽の「樹木そのものの鑑賞」のみならず、自然の風景、情景などを補完して楽しむものなのだそうです。
「この樹木が自然の状態で、生えていたとしたら、どのような環境で生えているか?」ということを想像して鑑賞すると言えばわかりやすいでしょうか?
例えば、この楽曲の第四曲のテーマになっている「吹き流し」ですが、幹の形状の一種で、幹が大きく曲がり、葉が幹の片側にのみ、一方向に流されるように整えられたものを差します。
この形が描くものは、強い風に吹きさらされて育った樹木。
自然界において、常に一定方向から強い風に吹きさらされた樹木は、幹や葉をまっすぐ成長させることができず、一方向に強く曲がった姿を持つそうで、吹き流しの盆栽とはこれを模したものです。自然の厳しさと、その状態においてもたくましく生きる樹木の姿を想像し、楽しむもののようです。
このほかにも、岩の間から生えている姿を模したもの、切り立った崖に生えている姿を模したもの、倒木が生き残ってそこから成長したもの…など多々あるようです。
この楽曲においても、そのようなことをイメージして作りました。
第一曲は「これぞ盆栽!」といった堂々とまっすぐに生えた五葉松を、第二曲では、森に見立て鉢に多く寄せて植えられた蝦夷松を、第三曲では花見での人の営みを、第五曲では雪のちらつく寂しい冬に葉を落とし、それでも強く生きるケヤキを描いてみました。
和素材を西洋由来のサックスで書くということ
主に描かれる対象を中心に曲について書いてきましたが、再現する媒体は西洋由来のサックスですので、ただただ和風なものはふさわしくないかなと思いました。そこで、和洋折衷なテイストを持たせようと想い、楽曲の形式や和声はクラシックを意図して作っています。特に第一楽章において、その傾向が強くまさに「日本人が書いた西洋クラシック音楽」という体をなしていると自負しております。
やや、脱線しますが、この楽曲の制作を通して、また、演奏を鑑賞することで、自分の中のサクソフォンのイメージが大きく変わりました。
音が大きく、ダイナミックな楽器、悪く言えば粗野な音さえ出せる楽器(これも優れた点であるのは間違いありません)だとばかり思っておりましたが、なんと繊細な音を出せる楽器なのだろうと…
実際に演奏を聞いたときには、ため息がでました。
この体験によって、また新しくサックスの作品を作ってみようかなと思うに至りました。
はい、脱線終わり^^;
一風変わった楽曲ですが、鑑賞するにしても、演奏するにしても十分楽しめるものになっているのではないかと思います。
ダイナミックさと繊細さを兼ね備えておりまして、難易度は高めですが、アンサンブルコンテストにもふさわしい楽曲だと自負しております。
第一楽章はクラシック音楽の神髄と言っても過言ではない、ソナタ形式の楽曲です。歴史の浅いサックスという楽器のアンサンブルではあまり見られない形式ですが、形式の学習にもってこいの曲です。
是非是非、一度手に取ってみてみてくださいね。
ちなみに…
奏者さんのお話を伺ったところ、第五楽章が「イイ」という声を結構いただきました。
一番地味なんです。最終楽章なのに一番寂しいんです(だってテーマが枯れ木の如きケヤキだもんで)。最後ppだし。しかも、超絶遅くてテンポ設定に二分音符=33なんてかいてあるんです。
それに加えて、スコアですら1ページしかないんです…
多分一番すぐできたよ、この楽章…
でも、いいんですって。
自分でも気に入っていたりします。
別の人曰く、命の秒針が聴こえるなんて言っておりましたが、あーそれもわかるw
実際にイメージしたものは伏せておきます。
ご想像にお任せ―
初演情報
本作の委嘱元はしらこばと音楽団さんで、初演がなされています。
初演1(第一曲):第8回世界盆栽大会inさいたま開催中の2017年2月11日、さいたま市盆栽美術館ロビーコンサートにて、しらこばと音楽団による演奏。
初演2(全曲):2018年11月3日、佐賀市歴史民俗館 浪漫座にて開催されたハッピークローバーコンサートにて、Brilliant Colors Saxophone Ensembleによる演奏。
ちょっと、いやかなり遠かったのですが、佐賀まで全曲初演を聞きにいってまいりました。
会場の浪漫座、情緒ある素敵な場所でした。少しだけ写真を貼ってみようかと思います。
楽譜販売しております
ちなみに、楽譜はHID楽譜出版でご購入いただけます。
サックス四重奏のための組曲「盆栽」楽譜 - HID Online Store
関連楽曲
吹奏楽の楽器でできるアンサンブルのページをご紹介します。
サックス三重奏
金管八重奏 その1
金管八重奏 その2
木管五重奏
盆栽学習の参考文献
「盆栽の誕生」 依田徹著