クラシック作編曲家 田丸和弥の実践・実体験・実験・音楽日記

千葉県鴨川市出身の作編曲家が自身の吹奏楽やオーケストラでの経験と考察、検証をもとにかゆいところに手が届く記事を提供いたします。作編曲家、演奏家、音楽愛好家さん向けですがコラム記事も!サイトでは一部記事でアフィリエイトプログラム、およびAmazonアソシエイトを利用して商品を紹介しています。また、Google Adsenseを用いた広告収入を得ています。

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昔の自作曲に手を入れてみたら、意外と悪くなかった話

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とても若いときに作った作品や文章を見返したことがありますか?

若気の至りともいえる恥ずかしさを覚えることも多いのではないでしょうか?ただ、それはきっと成長のあかしです。

その一方、「案外いい」「今は書けないかも」なんていういい要素が見つかることもあるかもしれません。

 

過去の振り返りと光るものを見つけて、さらに手に入れた経験で原石を磨いてみるのはいかがでしょう?

 

自己流で作曲しているけど、どうなんだろうとお悩みの方。

作者の感性による、実践的な楽曲の修正過程をご覧いただくことで、何か楽になるご助力ができたらなと思います。

 

昔の自作曲に手を入れてみたら、意外と悪くなかった話

 

 

 

中高生の時の習作のワルツ

題材にするのは、中高生の頃に作ったワルツです。

小学生の頃にスーパーファミコンのかなで~るで遊んだのをきっかけに、物足りなくなり中学2年くらいからDTMを始め、数年後の作品といったところです。

まず、最初に断っておきますが、かなりシンプルな作品で、深みのあるものではないのはお伝えします。

しかしながら、こんな単純な作品であっても手を入れたい、直したいと思うところがわんさかみつかるというのが今回のミソです。

それでは30年近くたった44歳が手を入れた結果をご覧いただきましょう。

 

30年近く歳を取って見えてきた問題点と手の入れ方

まず、問題点を3つほど、箇条書きにしようと思います。

  • 展開が単純でつまらない
  • 響きが汚い
  • 机上の空論

さて、どんなところに問題を持ったのでしょうか。

 

展開が単純でつまらない→解:対旋律のリアレンジ

展開が単純でつまらない。こう感じた理由は、複数回繰り返される箇所の変化があまりに少なかったということです。

変更前は、楽器法がやや拡大する程度の差しかなく作品として単調であったと思います。

そう思われる個所に手を入れていきました。

その1:最後の主部(POPSでいう大サビ)に木管の対旋律を追加

ここが一番印象が変わったかなと思う部分です。

 

主部をAとすると以下のような構成になっており、主部が5回現れます。

  • 前部:A1/A2/brg1/A3
  • 中部:brg2/brg2'/C1/C2/D1/D2/brg3/C3
  • 後部:A4/A5/Coda

その5回目を以下のように変更しました。

最後に出てくる主題の変遷(対旋律追加)

比較参考動画

www.youtube.com

 

A2は確保、A3も経過句を挟んだ前半の締め、A4は後半の始まり(久しぶりのご対面)ということで、この3か所については大胆なアレンジはなくとも単調には感じませんでしたが、A5は蛇足っぽくなってしまう。いくら楽器法を豪華にしたとて...

 

ということで、Aの旋律を変形させた対旋律を演奏させることにしました。

ここの対旋律結構作るのが大変でした。。。この曲の旋律が分散和音みたいな形で動きが大きすぎてうまく分離させるのが難しかった...

これがいいかどうかは置いておいて、きっと同時に書くことはできなかったものの1つでしょう。

※ついでに楽器法も少し変えています。映っていませんが、のびやかでレガートだったベースラインやハーモニーから音かの短くマルカートっぽい堂々とした伴奏に変更しました。また、フルートにもご注目。対旋律を邪魔するハモリを削除しました。

 

これによって、主題のバリエーションということは分かりつつ雰囲気を大幅に変えることができたと思います。

 

その2:中間部(C1/C2/D1/D2/brg3/C3)のD2旋律の2回目のトロンボーンの役割をオクターブ下の旋律を補強から対旋律に変更

もう一つが中間部です。

ここはこの楽曲で唯一短調になる部分で変化が際立つ部分で、一番ドラマティックな場所かもしれません。

そんな(多分)いい場所に工夫がないのはちょっとつまらない。。。

 

ということで以下のように変更しました。

中間部のトロンボーンを旋律から対旋律へ変更

もともとは、トロンボーンパートが旋律のオクターブ下をなぞるように補強してオーケストレーションが豪華になるだけだったものが、オクターブ下の追加は削除して、3本のトロンボーンによる対旋律に変更いたしました。

 

割と印象的なセクションに変わったと思います。

 

比較参考動画

youtu.be

 

その3:中間部(C1/C2/D1/D2/brg3/C3)のC2とC3にフィルイン的な要素を追加

正直当時の譜面は単調でつまらなかったと思います。

というのは、個々の譜面は3回出てくるCの部分は1回あたりの長さがAの倍もある部分なのですが、オーケストレーションがやや豪華になる以外の差がまったくなかったからです。

そんなこんなで、以下のような変化を付けました。

フィルイン的な追加要素

映っている部分は2回目と3回目でほぼ一緒ですが、この前の部分においては、2回目と3回目も差をつけています。

 

比較参考動画

youtu.be

響きが汚い→解1:和声の見直し

前節はかなり大きな変更に感じますが、個人的により肝要なのは、この節と次の節。

汚い響きの修正だと感じています。

ただ、この節は汚い響きというよりは違和感の残る響きといった側面が大きいかもしれません。

ここは好みの問題で済む場所かもしれません。(もともともありといえばありだったのかもしれません。今聞くと嫌なんですけれどもね)

 

コード進行を変更したところ


もしかしたらこのままでもこういう和声だと言えばありだったのかもしれませんが、違和感があり、変更しました。

変更前のものは、Ebだったら普通でしたが、これにC音が入ることでやや孤立した響きのように聞こえたのかなと思います。

変更後のEb7と書いてあるところは、Abに対するドミナントとしての機能が発生して、和声進行の必然性は増したのかなと思います。

蛇足ですが、こちらは、一時転調しているというか、和音を借用しているというかという部分であって、Eb7は本来のドミナントではないと考えられます。

 

比較参考動画

youtu.be

響きが汚い→解2:間違っている音の見直し

本丸はここです。

というのも、いくらいい旋律があっても、生演奏を前提にした楽曲において、汚い響きがあると台無しにしてしまうからです。

 

例えば、以下の譜面です。

音ぶつかりまくりの部分と修正後

旧作の部分の赤い四角で囲った部分は半音のぶつかりのデパートみたいな感じです。

これは結局頭の中で、旋律とハモリや飾りのコードを各々個別では破綻しないものを思い浮かべで「よし、できた。では両方記載しよう」とした結果、合わさるとコードが進行が異なってしまっているがためにとてつもない不協和になってしまっているという状況です。

 

これ、DTMで作っていると本当に気を付けないと頻発します。

音源を鳴らしながらだとしてもです。結構聞き落とし(そんな言葉があるのか?)ます。

 

この響きが汚いというのは、実際に楽器を弾きながら作らないと見落としてしまいがちで、DTMの場合に発生しやすい点も注意点だと思っております。

興味がある方は関連のあるこちらもご覧ください。

DTMで避けたい「意図しない不協和音」とは?原因と回避テクニックを譜例で解説 - クラシック作編曲家 田丸和弥の実践・実体験・実験・音楽日記

 

蛇足ですが、オーケストレーションもとても謎なところがたくさんあります。ありすぎてそれだけで記事が作れそうなくらいです。

例えば89の3rdフルートはこんな音域で聞こえるのか意味があるのか。とか90の1stクラリネットはこんな高い音を吹かせなくてもよいのでは(ヴァイオリンがここの音域をカバーしています)とか。etc...修正後のオーボエとかもちょっと謎なところがありますがね…

 

蛇足2

ちなみに、このような半音でぶつかる現象も巧みに音域を分けて、またしかるべき、和音の重ね方をした場合は、非常に効果的になる可能性もあります。

ただ、旧作の部分はそれもできていないので、本当にガチャガチャな音がします。

まぁ、それが味だと言い張ってもいいのです。。。が…ねぇ…

 

比較参考動画

youtu.be

 

机上の空論→解:楽器法の見直し

例えば、この譜面を見てみてください。

習作のある楽器の譜面

なんの楽譜だと思いますか?

 

実はホルンの楽譜です。

 

付点二分音符=63くらいのテンポなので、決してゆっくりではありません。

 

この譜面でも、もしかしたら演奏できないことはないのかもしれません。

しかし、できたとしても難易度はかなり高いと思いますし、他の楽器に比べて不自然に大きく、ぎこちなくなることは間違いないでしょう。

上のほうの音が担当する音域、跳躍、音形、他の楽器とのバランスなどを鑑みてホルンにふさわしいかといわれると著しく疑問がうかぶ譜面です。

 

しかし、若かりし自分はきっとできる(確かにできないことはない)ということで机上の空論を堂々と書いてしまっていたのでした。

 

これ以外にも、イングリッシュホルン1本が旋律をやっているところに高音のトロンボーンを持ってくるという暴挙もありました。

※ホルンもかなり気を付けないと危険かも。

イングリッシュホルンの旋律に対して高音のトロンボーンの伸ばし

 

こちらはフルートに音を移動して解消しています。

トロンボーンの伸ばしをフルートの低音へ移動

 

色々書きましたが、最後に一応注意点。

ただし修正後の状態においても実演は実現していないので、まだ机上の空論の良くない楽譜である可能性が否定できないことは、念のため申し添えます。

 

参考動画

youtu.be

 

手を入れるのは実は難しい

もともとあるものに手を加えるというのは、その問題点が小さい場合や問題点が一部にまとまっている場合においては易しいですが、問題点が大きかったり、散在していたり、またはそもそも構造に不備があったり、という場合は非常に難しいものです。

 

実際、昔作った曲に手を入れた経験は何度かあります。

 

この楽曲については、その中ではやや簡単くらいなレベルでしたが、難しいものにおいては、中間部をそっくり入れ替えて前半もニュアンスと主題がやや残った程度のほぼ作り変えということもありました。

この差は何かな?と考えてみたのですが、この節の最初にいったことに集約されていて、元がどれだけ良かったか?なのかなと思います。

若い頃の作品に手を入れるのは、気づきがあって面白いのですが、ただうまくいかないこともあるし、うまくいかないからと言って現在の自分の力量に問題があるとは限らないのではないか。

そのように思って取り組んでみるといいかもしれませんね。

ただ、もっともっと経験を積んでレベルアップしたらできてしまうかもしれませんけども。

 

昔の作品の欠点が見えるようになることと、その作品を良くできることは必ずしも同じではない。

問題点が局所的なら修正で済むが、構造そのものに問題がある場合は全面改稿になることもある。

 

ただ、手を入れてみようと思う作品はきっとある程度愛着があるものでしょうから、完全に破棄するような事態になるのは少ないのかな?とは思います。

 

 

成長の実感と原石(?)の再発見

意外と「若い頃の自分」は悪くなかった

30年経って聴き返すと粗もたくさん見つかる。

しかし、当時の自分にしか書けなかった良さも確かに残っていた。

 

その一つが引き算的なオーケストレーションがなされた、4回目の主部であるA4の部分についてです。

主題であるAは基本的に後ろに行くほど楽器法が拡張されます。

 

一部の例外を除いて。

 

その一部の例外というのが打楽器です。

A1は打楽器なし、A2にトライアングルが入り、A3回目にバスドラムとシンバルとスネアが入り豪華になります。

ところが、当時の譜面ではA4ではバスドラムが引き算されていました。

A3のようにバスドラムが入ると音楽がしまりますが、前半の終わりの部分にバスドラムを入れて、後半の開始に入れていないというのは、その部分の役割を考えると理にかなっており、今の自分からしても割とセンスがあると感じます。

(自画自賛で恥ずかしいですが…)締めてパリッとさせるところと、落ち着かせてやや内省的にするところ、豪華だったのにに少し収まって「おやっ?」とさせるところという役割にははまっていたのかなと。

 

作編曲という観点から言うと、驚くほど些末なことなのですが、案外印象には影響を与えうる大事なことなのではないかなとは思います。

 

このように、30年前の作品を見返してみると、技術的には未熟な点ばかりが目につく一方で、「音楽としての勘」のようなものは当時から芽生えていたことにも気づきました。経験はその勘を言葉にし、再現可能な技術へと変えてくれるものなのかもしれません。

 

ただ、この件にはさらにオチがあり、44歳の私は、A4からシンバルとスネアもリストラし、小節の頭打ちのトライアングルに差し替えてしまったのですがね...

 

シンプルな習作のワルツ悪くない

お恥ずかしい話ですが、ドライブ中のセットリストの中に自作や自分の演奏した作品が結構はいっています。

(自分の作品を聞く人ってどの程度いるのでしょうか。。。私が商業作曲家ではないからなのか…)

 

実は、その中にこの曲も入っているのですが、これがまた良い要素なんですが、その理由は「比較的単調な作品だから」なのではないかと思っています。

 

劇的な展開を持つ作品というのは、腰を据えて聞こうと思うときにはやっぱりいいものだなと思います。

 

一方、BGMというのもとても大切な一音楽の様態だと思っていて、この曲はBGMに必要な要素を若干持っているのではないかと思っています。

全部に当てはまるわけではありませんが、語弊を恐れずに言えば、起伏の少ない安定した作風だということです。

  • 展開がシンプル
  • 起伏が少ない
  • テンポの変化が少なく急激ではない

ともすれば、本格的な展開を持つ作品ばかり作ってしまいがちな昨今の私なのですが、ドライブという普段あまりない環境に置いて何でもかんでも複雑で構成力の強いものがふさわしいわけではない。ということを知るという、良い機会になりました。

 

後から聞き返すと、恥ずかしいと思うことの多い若い頃の作品ですが、捨てたもんじゃないですね。取っておきたいものは大事にしようと思いました。

 

手入れ後の作品はこちら

完成版の動画です。

弦5部の譜面をもとに動画を作りました。

 

ちなみに、作った当時のことを思い出すと、主題のチェロの動きは多分アンダーソンを意識しています。(彼のようなおしゃれなコードからは遠くかけ離れておりますが…)

当時何を聞いて何を感じ、どう創ろうとしていたのか、思い出せるのも古い作品の良いところかもしれませんね。

www.youtube.com