お久しぶりです。本当に…
またしても事後ですが…
去る2022年4月3日(日)所沢の航空公園近くにある「所沢市民文化センターミューズ アークホール」にて開催されました「チェンバー・フィルハーモニック東京 第30回演奏会」に出演しておりました。
チェンバー・フィルハーモニック東京さんのHPはこちら。
演目は…
- ドビュッシー(ビュッセル編):小組曲
- ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.61 [2009年ベーレンライター原典版]
- ラヴェル:バレエ《マ・メール・ロワ》バレエ全曲版
- サティ(ドビュッシー編):ジムノペディ第3番 [アンコール]
という感じでございましたが、これの後半2曲(片方はアンコール)に出演いたしました。
担当楽器はなんと「鍵盤グロッケンシュピール」でありました。
鍵盤グロッケンシュピールとは何ぞや?と思われる方もいらっしゃることでしょう。。。
現代の通常のグロッケンはこういったものです。
台にのったフリー画像もありましたので、はっつけ。
吹奏楽やオーケストラを経験されたことない方もご覧になったことがあるのではないでしょうか?
この楽器は、バチを使って叩いて演奏する楽器です。
これに対して鍵盤グロッケンシュピールというのはチェレスタのような形状をした楽器です。*1
箱型の筐体の中に楽器本体と言いますが、音の鳴る部分が格納されており、それを外部にある鍵盤から操作する形になります。
グロッケンシュピールというとバチでたたくもの(現在の一般的なもの)をイメージすると思うのですが、実は、歴史上に先に登場したのは、鍵盤付きのもののほうだったようです。
モーツァルトの「魔笛」でこの楽器を使われているのが有名なようです。
バチ式がその後隆盛し、いったん鍵盤型が廃れたのは、バチ型の楽器で足りる奏句がほとんどであったことと、バチ式の楽器の構造が単純であった(作るのも簡単、予算もかからない、修理も簡単等)からなのでしょう。
ということで、鍵盤グロッケンシュピールはあまり使われることはないし、近代でいったん復興したとはいえ、現代においてもなお一般認知度も低い楽器であると思います。(需要はさほどないだろうから楽器高いみたいだし、今回はレンタルだったそうです)
しかーし、ポテンシャルはとても高い楽器だと思いました。
鍵盤で演奏できるのってとても便利なんですよね。
- バチの場合は、通常であれば、片手で1本、時に2本(3本もあるのかな?)ということで、同時2音~4音(6音?)なのに比べ、指は片手で5本、同時に10音押せる。
- 指で鍵盤を演奏するほうが、操作盤への距離が短い。体の移動距離が短いために素早い操作が可能。
打鍵の強さについて、運動量がハンマーアクションの範囲内だけである(バチでたたくのに比べ距離の制限が多い)という点によるデメリット*2を除き、複雑な譜面の演奏という点においては、鍵盤グロッケンシュピールに大きく軍配が上がりそうです。
ということを踏まえ、求められるパッセージに応じて楽器を使い分けるというのはありそうです。
で、今回のマ・メール・ロワについてはどちらがふさわしいのか?という点について、チェンバー・フィルハーモニック東京さんは鍵盤型グロッケンであろうという結論に至り、今回わたくしの出番となったわけであります。
ちなみに、楽譜上の指定は"Jeu de timbres"となっておりました。
字面から解釈した場合は、通常のグロッケンシュピールと考えるのが普通でしょう。
というのも鍵盤グロッケンシュピールを明示する方法があるからです。すなわち、「鍵盤の」という言葉を付けた"Jeu de timbres a clavier"という言葉があります。
しかーし、時代背景等を考慮する必要があるのもまた事実であります。
フルートはもともとリコーダーを意味し、現代のフルートはフルート・トラベルソと呼ばれていたことからも察していただけることであろう。
また、ドビュッシー以降、近代で鍵盤グロッケンシュピールの再興もありました。すなわち、いったん廃れた楽器がやや一般化したと言えると思います。
以上を踏まえると、"Jeu de timbres"この表記からだけではどちらの楽器を使うべきか、すなわち、鍵盤型グロッケンシュピールなのか、それとも通常のグロッケンシュピールなのか、どうとでも取れるようです。
こうなった場合は、楽譜から類推するのがよかろうという結論に至ったというのは、簡単に推測ができます。
ちなみに、楽譜を見ますと、バチ式では難易度が高く鍵盤では平易な楽句がいたるところに見受けられました。
よかったら、実際の楽譜をご覧いただけるとその意味が分かっていただけるのではないかと思います。
Ma mère l'oye (ballet) (Ravel, Maurice) - IMSLP: Free Sheet Music PDF Download
蛇足ですが…
サティの方にはグロッケンパート自体ございません。ここで何をしたかというと2台あるHarpパートの片方を、チェレスタとユニゾンで演奏いたしました。
本来の指定とは異なる楽器での演奏でしたが、とても面白く、夢見心地な響きがしていました。ご好評いただけたようです。
長々と脱線(?)してしまいましたが、要は、大変貴重な興味深い体験をさせていただきました。ということです(汗)
一応、奏者の端くれとして、新しい楽器を演奏できる実績を積めたこと、また、一応作曲者の端くれとして道の楽器に、そして先人の実績(楽譜)に触れることができたこと、これはこの演奏会に読んでいただけなければ私の人生で一度も発生しなかったことであろう。
そう思います。
大変に貴重な経験でした。
ということで、引き続き音楽とも細く長く向き合っていきたいと、心新たにする機会でした。
今年も頑張りますよー。