POPSにも果敢にチャレンジ!クラシック作編曲家 かずまるの音楽日記

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歌詞は一度は見直すべし~作詞ド初心者がオリジナル曲を作るまで?~

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今回は一旦作詞ができた人に向けてのポイントになればと思っております。

ずばり、作って作りっぱなしは良くありません。

寝かせてかならず見直すようにしましょう。

 

ということで、見直す前と見直した後を例示して、解説してみたいと思います。

 

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歌詞は一度は見直すべし~作詞ド初心者がオリジナル曲を作るまで?~

 

歌詞の新旧比較

ちょうどよいサンプルが音源毎残っていました。(なんて、準備のいいことでしょう!)

かずまる名義のデビュー作「大切なあなた」です。

ということで、新旧バージョンを比べていただきたいと思います。

時間のない方は、歌詞だけ見比べてみてください。

 

ちなみに、この曲のテーマは「元気出してね!勇気づけてくれる人はたくさんいるよ?家族・友達はもちろん、自分自身もだし、自分の思い出だって勇気をくれるんだよ?」といったものです。

コロナ禍で憂鬱な皆さんに、元気を与えられますように。

 

では、恥ずかしながら没案をさらしながら、こんな風に変わりましたというのをさらしてみようと思います。

 

 

初版の歌詞

まず、初版を音源とともに歌詞をご覧ください。

 

行きかう車 人の気配 社会の営みがかすかに聞こえる

友の息遣い 笑い声 思い出は遠く薄れてゆく

 

頬にさす光に誘われ風の音を聴けば ほら、生はそこにある

窓を開いて 覗いてみよう

 

少し寂しい時も 少し悲しい時も

どうか自分を大事にしてほしいから

 

月の下歩き続ける ひとりぼっちの僕は目を濡らす

 

ぬぐった先の僕を見つめる猫の目を見れば

懐かしい日々よみがえり 語りかけてくる

いつもそこにいるよ

 

挫けそうな時も 涙が出る時も

そばにいて抱きしめるよ落ち着くまで

 

少し寂しい時も 少し悲しい時も

そばにいて 見守るよ

落ち着くまで そっと

力がわいたら少しずつ また歩いていこう 

 

赤太字のところが、改訂版と異なっているところです。

歌詞がすんなり耳に入ってこないのがお分かりになるかと思います。(そのためにも、なるべく聞いていただくのがよいと思います 。)

とくに、2番のBメロ「ぬぐった先の~」のところが「???」となるのではないでしょうか?

これを踏まえ先に進んでいただきたいと思います。

 

改訂版の歌詞

初版を友人に聞いてもらって、上記のようなことを指摘されました。

また、うすうす自分でも感じていたことではあります。

それを踏まえ、情報を整理してできたのがこちらの改訂版です。

どうぞ、お聞きいただければと思います。(時間のない方は歌詞だけでも結構です)

 

 

行きかう車 人の気配 社会の営みがかすかに聞こえる

広い部屋には ぽつんと 僕だけが一人佇んでいる

 

頬にさす光に誘われ外に目をやれば  ほら、そこには命

ドアを開いて一歩踏み出そう

 

少し寂しい時も 少し悲しい時も

どうか自分を大事にしてほしいから

 

月の下歩き続ける ひとりぼっちの僕は目を濡らす

 

涙ぬぐって顔上げて のら猫と見つめ合えば

懐かしい日々よみがえり 語りかけてくる

いつもそこにいるよ

 

挫けそうな時も はりさけそうな時も

そばにいて抱きしめるよ落ち着くまで

 

少し寂しい時も 少し悲しい時も

そばにいて 見守るよ

休まるまで そっと

力がわいたら少しずつ また歩いていこう

 

初版と同様に赤字の部分が変更点です。

こちらの方が、歌詞がすんなり頭に入ってくることがお分かりになると思います。

情景描写も気持ちも、思い浮かぶのではないでしょうか?

 

さて、この新旧2つを踏まえ、旧版の一体どこがいけなかったのか、自己分析してみたいと思います。

「うん、そう思う!」という方にとっても、「自分はそうは思わない!」という方にとっても、有益な情報になると思います。

なぜなら、納得できるケースであったとしても、納得できないケースであったとしても、自分の中で情報が整理され、何らかの結論が「ストン」と落ちる助けになると考えられるからです。

ということで、先に進んでいただければと思います。

 

改善したポイントと理由

情報詰め込みすぎで返って説明不足に

旧版「頬にさす光に誘われ風の音を聴けば」のところ、改訂版では「頬にさす光に誘われ外に目をやれば」に変更しました。

もともとは、光や風の音を感じることができれば、それがやってきた外が気になり、目をやり…「命がそこにあることに気づく」という意図でした。

五感を少しでも多く織り込みたいと思ったんですね。

ただ、短い歌詞のなかで聴覚を入れてしまうと、「外が気になって目をやる」という動作が抜けてしまうことになり、「命があることに気づく」に至るプロセスが抜けてしまいました。

これだと、「え?なんで命があることに気づくの?」って思ってしまいませんか?

書いているときは、結構気が付かないんです。

書いてる自分はシチュエーションを脳内で補完できてしまうので、ただ、改めて聞いたときにうっすらと「?」と感じると思います。

そういう部分は絶対に何かおかしいので、スルーしない様にするのが吉です。

 

 

短いフレーズで理解できるように

旧版で一番わかりにくいのが、この部分ではないでしょうか。

「ぬぐった先の僕を見つめる猫の目を見れば 」

これを改訂版では、以下の様に変えました。

「涙ぬぐって顔上げて のら猫と見つめ合えば」

 

単純に言葉を組み立てるセンスがないともいえるのですが…旧版がわかりにくい原因は「丁寧に説明しようとしすぎたから」と「無理に一文で言おうとしたから」と言えるでしょう。

 

これ、普通の文章だったら旧版の順番でもある程度自然になるんです。

「涙をぬぐって顔を上げた先に僕を見つめる猫がおり、その猫と目が合った」という文章です。(どっちにしろ、あまりよい文章ではありませんが…)

これをあまり何も考えずに文字数に収めようとした結果できたのが旧版ですが、上の文よりも全然意味の分かりにくい言葉になってしまいました。

具体的に何がわかりにくいかというと、あまり重要ではない言葉(修飾語)が長すぎちゃったんですね。

「ぬぐった先の僕を見つめる(猫の)」までが修飾語になっていて、記憶しないといけない言葉が多くなりすぎてしまったんです。

 

それに対して、当初の意味とまるで同じにはなっていないのですが、改訂版はこのシチュエーションを2つの動作に分けて説明しています。

「涙ぬぐって顔上げて」と「のら猫と見つめ合えば」です。

動作が2つに分かれたことで、意味が通じるスパンが短くなって、すっきりしました。

脳内メモリーを圧迫すべからず!と思っているといいかもしれませんね。

 

「生」と「命」の対比~どちらが聞いてわかりやすいか~

旧版で「生はそこにある」だったところですが、改訂版では「ほら、そこには命」としました。

(どちらも文章としてみると不完全ではありますが、通じればいいのでそこは置いておいて)この時の「生」ですが、発音にすると「Sei(See)」となってしまい「生なの?性なの?精なの?」と一瞬何を指しているのかわからない状況になってしまいます。

こういう場合は、別の言葉に置き換えるのが吉です。

そういう意味で「訓読み(和語)の言葉」は優秀であると思います。

 

また、こんな時は類語辞典という便利ツールもあります!

おススメです。(単語を入力すると似たような意味の言葉を検索してくれる便利ツールです)

thesaurus.weblio.jp

 

よりイメージしやすいシチュエーションを選択する

旧作「友の息遣い 笑い声 思い出は遠く薄れてゆく」としていた部分を、改訂版では「広い部屋には ぽつんと 僕だけが一人佇んでいる」に変更しました。

当初考えていたシチュエーションは旧作の方なんです。

「友達の様子は遠い思い出となってしまった、今はその記憶も薄れていく→寂しい」というシチュエーションだったのですが、「寂しさが伝わるかな?ちょっと薄いかな…」と思いました。

改訂版のほうが、より寂しい雰囲気が出ているのではないでしょうか。

感情面というよりは、「寂しいと類推できるシチュエーション」に変えてみました。

寂しいという言葉は使っていませんが、明らかに独りぼっちな感じが出ていますよね?

 

 

言葉を繰り返すべきか否か

ここら辺からは好みの問題になってくるかなと思うのですが旧版の「落ち着くまで」を改訂版では「休まるまで」に変えました。

変更した理由としては、その前に「そばにいて抱きしめるよ落ち着くまで」と使っており、繰り返しになってしまうからです。

繰り返しはすべきです、ただし、大事な部分に限定すべきだとも思います。

言葉を繰り返すということは、その言葉が頭に残るということです。

ということは、ここぞという言葉こそ残すべきで、そうでない言葉はあまり残しすぎないほうがいいと言えるでしょう。

そういう意味で、サビの開始の「(少し寂しい)時も (少し悲しい)時も」こそが繰り返すべき言葉と考えました。

そのため、別の部分は極力繰り返さない様にしています。

※ただ、これは、戦略的によーく考え、必要であればむしろやるべきことであると思います。

 

結論:見直せ(笑)

です。身も蓋もなくてスミマセン(苦笑)。でもこれに尽きると思います。聞き直したときに「ん?」と思うポイントがあったら、絶対にスルーしてはいけないということです。

また、人に聞いてもらっての感想も大切です。

ダメなのは「思っていたのと違う感想」ではありません「感想がない」ことです。

「なんか言葉が入ってこない」なんて感想がでたら危険信号です。

 

ただし、全部がまるでダメとも限りません。

 

この作品でいえば、初版の時の友人の感想は「悪くないんだけどわかりにくい」でした。わかりにくいところがあって微妙にしっくりこない、という程度であれば表現を少し見直すだけで劇的に改善する可能性があります!

 

1か0かで判断するのではなくて、可能性を模索していきましょう!

(箸にも棒にも掛からぬ、という場合は思い切って捨てるのもありかもですが…)

 

 

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