もろもろの準備をしていたら、こんな時間になってしまいました…
今日は、もしかしたらちょうど時期なのかもな楽曲をご紹介してみようかなと思います。
金管バンド イージーコレクション「庭の千草」
参考演奏
ことしの三月に公開されたようです。
設定テンポよりはゆったりなのですが、これくらいのテンポも雰囲気がでてよいかもしれません。
生楽器ゆえの良さ
楽譜のほんの一部のみ切り取ってみました。ご覧ください。
何がいいたいかと申しますと…この赤でかこまれた部分なのですが、第三音が無いんですね。
第三音は基本的に省略してはいけない音であります。
ただ、この楽譜においては、第一拍を見ていただくと、ちゃんと第三音が配置されています。これはこれでOKなんです。理論上。
しかーし、これをソフトウェアで再生すると、スカスカで気持ちが悪いんです。悲しいかな…
「あぁあ、残念残念残念だよ!」
ところが実際の演奏ではソフトウェアの再生で感じたような残念さがないんですね。
やっぱ、実演は強い!
楽曲の概要
4分の3拍子、ハ長調、アンダンテ、複合三部形式の楽曲となっております。
形式の概要はこんな感じです。
- 序奏 1 - 12小節
- 主部:A(三部形式) 13 - 28 小節
- 主部:A’(三部形式) 29 - 44小節
- 中間部:B(三部形式) 45 - 59小節 (ヘ長調)
- 中間部:ブリッジ 60 - 75小節
- 再現部:A''(三部形式) 76 - 94小節
- コーダ:95 - 107小節
AおよびBと書いてある場所が「庭の千草」の部分です。調性が異なるものを含め、計4回演奏されます。Aは提示、A'は確保です。Bは調性とテンポ、アレンジを大幅に変えて曲調にアクセントをつけております。A''はもっとも荘厳な曲の終わりを匂わせるアレンジとなっております。
庭の千草の元々のタイトルは"The Last Rose of Summer"
邦題の「庭の千草」とは若干ニュアンスが異なるように思います。「夏の終わりのバラ」、「庭にある秋の草々」 。
ただ、夏の終わりにひっそりと残った花を比喩に人の心をを描いているという点は似ているように思います。
詩の内容は大人向けかなぁと思いますが、お子さんにも取り組んでいただきたい楽曲です。
ティーダ出版のイージーコレクション
ティーダ出版で取り扱っている、小学生向け、特に始めたばかりの生徒にも取り組みやすい平易な小編成のシリーズです。
各楽器の高音域および最低音域を避け、曲の組み立ても複雑になりすぎないように設計されています。
編成が小さいのも取り組みやすいポイントであろうと思います。
ちなみに、「庭の千草」の編成は以下の通りです。
- Cornet in Bb 1
- Cornet in Bb 2
- Alto Horn (in Eb)1
- Alto Horn (in Eb)2
- Trombone 1(ヘ音表記)
- Trombone 2(ヘ音表記)
- Euphonium(ヘ音表記)
- Tuba(ヘ音表記)
- Timpani
- Percussion(Triangle, Cymbal&Bass Drum)
- Glockenspiel
- Marimba
このように、金管バンドの全楽器がそろっていなくても取り組める楽譜です。大編成の学校でも、たとえば、BaritonehornはEuphonimuやTromboneの楽譜を演奏する。FlugelhornはCornetの楽譜を演奏する。といった方法で取り組むことができます。
変ホ長調からハ長調に変更
ちょっとした裏話です。このアレンジですが最初は変ホ長調で作っていました。変ホ長調の方が読譜が簡単であろうと考えたからです。というのも金管バンドの楽器はBb管かEb管であるからです。
変ホ長調であればEb管の楽器は調号なし、Bb管の楽器は♭1つと読譜がしやすいのです。これに対してハ長調の場合Eb管の楽器は♯3つ、Bb管の楽器は♯2つとなります。
ただ、変ホ長調版の場合は、トランペット1stの五線のファがたくさん出てきてしまう。というデメリットがありました。(この曲は、最高音が何度も何度も出てくるのです)
小学生向けということを考えると、高音のデメリットは大きく、読譜が多少難しくなろうとも、低い方がよい。とのことで、短三度下のハ長調に移調いたしました。
簡単にはいかないぞ移調
このように書くと、移調とは音をただ下げたりあげたりと、いとも簡単なように聞こえるかもしれません。
しかーし、ことはそう単純ではないのであります。
編曲家は、最初に定めた調性で一番うまく鳴るように設計をいたします。これを例えば下げたとすると、ローインターバルリミットの影響を考えなくてはなりません。
この記事でローインターバルリミットについてちょっとだけ触れています。
簡単に申し上げますと、2つ以上の音を配置する場合、低音なればなるほどその間隔を広めに取る必要があり、単純に全体を下にずらした場合、その影響が出る可能性がある。ということです。(高音域でまとめているのでもなければ、3度も下げると影響が出る可能性が高いです。特に、中低音楽器の多い吹奏楽や金管バンドの場合はそうなりやすい)
で、こういったことを避けるために、適宜内声を上に持って行ったり(普通のハモりだったのを上ハモりに変えるのようなイメージ)、形を変えたりする必要がありました。
はい、大変でした…ということはなくて、楽しくできましたよー。全く破棄して新しく作るというほどのこともなく一部の対応で済みましたし。
ただ、移調は思ったほど単純じゃないぞというお話でした。
このローインターバルリミット以外にも…
- 演奏不能または難しい、低音・高音域にはみ出る可能性
- (弦楽器であれば)重音の見直し(開放音を使った重音に関しては移調した場合パー)
- 調性と曲調のイメージが合うか…
ぱっと思いついただけで、これくらいありまーす。
生楽器の場合、カラオケのトランスポーズのようには行きませんよー。アレンジをする場合も依頼する場合もご注意くださいませ。
楽譜入手
ティーダ出版さんの別レーベル、コラージュ音楽出版で販売しております。
是非、お買い求めください。
田中玲子ユーフォニアムリサイタル Vol.11
しばらく宣伝文句を挟んでみようかなと思います。
こちらの演奏会に伴奏者として出演いたしまっす。チケット取り扱っております。
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