POPSにも果敢にチャレンジ!クラシック作編曲家 田丸和弥の音楽日記

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埋もれていた 小編成吹奏楽曲「夏の音」

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今まで何度か記事中で触れた楽曲ではありますが、正式に触れたことがなかったな…と思い返しまして、記事を立ててみます。

 

今、ちょうど夏ですしね!

 

 

埋もれていた 小編成吹奏楽曲「夏の音」

 

演奏動画

もともと、ソフトウェアの音源しかなかったのですが、今年になって実音の音源が公開されました。

 

www.youtube.com

作曲:田丸和弥
指揮:宮嵜三千男
演奏:尼崎市立尼崎双星高等学校

 

近隣の学校を見ていても思うのですが、中高吹奏楽部の生徒ってとても忙しんですよね…吹奏楽コンクール、アンサンブルコンテスト、ソロコンテストは言わずもがなですが、それ以外にも卒業式、入学式、体育祭をはじめとした、学校行事に駆り出され、文化祭に自主企画演奏会、それに加え、民間の施設での演奏をしたり、慰問演奏をしたり…

あ、野球部のある学校は野球応援もありますね。

と…とにかく引っ張りだこです。

そんな中、こういった録音に協力してくださるというのは、大変ありがたいことです。

 

生徒のみなさん、そして、(とてーも多忙だと思われます)顧問の先生…この場をお借りして感謝申し上げます。

 

「和か、スラブか」迷っていた作曲時のコンセプト

完成形を聞くと、一部を除き和風な雰囲気をまとう楽曲になっていると思うのですが、最初は和風な曲という意識はありませんでした。

どちらかというと見出しにあります通り、スラブ風の楽曲を狙っておりました。

 

しかし、スラブ…またスラブか…

 

過去記事を読んでくださっている方の中にはご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、何を隠そう私はスラブの音楽が大好き。

 

これですとか…

www.petit-orchestra.jp

 

これですとか(スラブ舞曲の要素を持つ楽曲を含んでいます)

www.petit-orchestra.jp

 

これですとか(17名~の収穫祭はまさにスラブの音楽)

www.petit-orchestra.jp

 

そう、「またスラブ…」となってしまったのですね。なんとなく自分の中で…

 

 

そのため、この曲に関しては、あまりスラブスラブと考えないように作ることにした記憶があります。で、出来たのがこれ。

といっても、さほど和風とも思わないのですが(爆)

いやいやいやいや、主部のリズムは夏祭りを意識していますよ。短調な楽曲ではありますが、暗い音楽ではなく、力強い意志を感じる音楽です。

 

もう一つ、脱線。私、そもそも「夏」という季節がさほど好きでなく、暑いじゃん…夏をイメージした楽曲はさほど多くないのですが…これはタイトルにもあります通り、自分比では珍しく「The 夏」といった一曲になっていると思います。

 

近い楽曲にこちらもございます。

www.petit-orchestra.jp

千葉県一宮町立一宮小学校金管部のための描き下ろし作品です。玉前神社のお祭りのシーンをイメージした部分を含む楽曲です。

 

そんなこんなで、パッと表に出したい、という気持ちより「少し寝かせておこうかな」という気持ちもあり、埋もれておりました。

結果的に出てよかった。

 

楽曲解説

4分の2拍子、ニ短調(♭1つ)、アレグロ・コン・フォーコ。フォーコ(fuoco)は情熱的に意味。ソナタ形式の特徴を持つ三部形式の楽曲とで言いましょうか。スタンダードな形式からは多少逸脱したものです。

 

楽曲構成 ソナタ的要素を持つ三部形式

構成を簡単に記してみます。

三部形式でいう主部(ニ短調)

  • ソナタ形式でいう提示部【第一主題】にあたる部分:1~24小節
  • ソナタ形式でいう提示部【ブリッジ】にあたる部分:25~32小節
  • ソナタ形式でいう提示部【第二主題】にあたる部分:33~52小節(ヘ長調)
  • ソナタ形式でいう提示部【ブリッジ】にあたる部分:53~64小節
  • ソナタ形式でいう提示部【第一主題】にあたる部分:65~84小節

三部形式で言う中間部(変ロ長調)

  • 導入:85~92小節
  • 第三の主題:93~108小節
  • ブリッジ:109~119小節
  • ソナタ形式でいう展開部にあたる部分:120~138小節,139~154小節

三部形式でいう主部の再現(ニ短調)

  • ソナタ形式でいう再現部【第一主題】にあたる部分:155~170小節
  • ソナタ形式でいう再現部【ブリッジ】にあたる部分:171~186小節,187~194小節
  • ソナタ形式でいう再現部【第二主題】にあたる部分:195~219小節(ト長調)

コーダ

  • ソナタ形式でいうコーダにあたる部分:導入220~227小節,228~247小節,248~255小節

 

ソナタ形式でいう再現部の第二主題の調性がソナタ形式のそれとは異なりますので、ソナタ形式とは異なった形式であると言えます。

 

代表的な3つの主題

代表的な主題をご紹介してみようと思います。

夏の音 主要主題

夏の音 主要主題

 この曲には序奏は存在せず、冒頭からいきなり主部の主題(ソナタ形式で言う第一主題)が提示されます。前半4小節がリズミックなもの、それを受ける後半4小節が丁寧に歌うもので、対照的な要素で構成されています。

 

続いて現れるのが、ソナタ形式で言う第二主題で、このようなものです。

夏の音 第二の主題

夏の音 第二の主題

主要主題に対してテンポを落として優しく演奏されます。印象的には、第二の主題というよりも経過句的な主題にも聴こえます。三部形式で考えたときには、まさに、補助的な主題と言えるでしょう。

 

もう一つ、中間部の主題(第三の主題)はこのようなものです。

夏の音 第三の主題

夏の音 第三の主題

第二主題よりメロディックで、メロウな旋律です。

 

主題操作の例

中間部の旋律がひと段落し、主題操作が行われる(ソナタ形式でいう展開部)部分においては、第二主題よりも第一主題よりも、第三の主題の方がメインで展開が行われます。

 

例えばこんな感じです。ちらっとお見せします。

展開部の主題操作1

展開部の主題操作1

展開部の主題操作2

展開部の主題操作2

青枠が第一主題、緑枠が第二主題、赤枠が第三の主題です。

第三の主題が旋律的に使われているのがわかるでしょうか?また、逆に特に、二枚目において、第一、第二主題は装飾的リズム的要素として使われているのが、同様に見て取れると思います。

最初の図においては、第三の主題と第一主題が結合されて新しい旋律が作られています。

 

この楽曲においては、コーダにおいても、同様の主題操作が行われています。ご興味がおありの方は、この3つの主題を念頭に耳を傾けてみてください。

 

ちなみに、主題操作とは主題をこのように変形させて使うことを言います。

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難易度について 通常平易なパートが難しいかも…?

出版社のページに書いてあります通り、2.5程度の見積もりです。もう少し高いかも…

(基本的に)金管楽器の超高音は避けられていますし、難しいパッセージもありません。ユーフォニアムに多少難しいものがありますが、ユーフォニアムは金管楽器の中で、例外的に木管的な動きが多用されがち。そういう宿命の楽器なので、目をつぶっていただきたく。その分美味しいんですよ。

 

どちらかというと、楽想の扱い方、表現面や、サウンドの作り方(もともと小編成用楽曲で薄く書かれている=一人一人の重要度が大編成に比べ大きい点)に難しさがあると言っていいでしょう。

 

ただ、例外もあります。

第三トランペットパートです。

 

良くあるパターンだと、金管楽器は第一奏者が高音担当で、下に行くにつれ低音でまとめられるというように作られますが、この楽曲の第三トランペットパートは真っ向から対立する概念で作られています。

 

と言いますのも、この楽曲の第三トランペットパートは楽曲を派手にする担当であるためです。

ここで使っている「派手」の意味は、高音の旋律にトランペットの輝かしい音色を付加するということを指します。

そのため、第三トランペットパートはとにかく目立つところに参戦し、休んでいる時間は実は長く設定されています。休みは多いけれどもプレッシャーは半端ないとも言えましょう。

 

「え、なんでこんな役割なのに1番じゃないの?」と思われるかもしれませんが、3番は必須なパートではないためです。

出てくれば3番が一番目立ちますが、その要素はクラリネット等高音木管楽器の補強を目的としたもので、楽曲の構造的に必須なのは1番と2番パートであります。

そう、3番は必須ではないけれども、余裕のあるバンドはこれを追加すると格好良くなるよ!というパートであります。

 

ということで、なんとなく3番は下級生…と割り振るとえらいことになりますので、ご注意くださいね。

 

たまにはこんな役割もありじゃない???

 

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