POPSにも果敢にチャレンジ!クラシック作編曲家 かずまるの音楽日記

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pf 強弱の解釈と演奏

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暑い日が続いていますね…熱中症にお気をつけあれ。

 

さて、本日は強弱(音量の大小)記号に関する記事を書いてみようと思います。結構奥深いですよ。

 

 

pf 強弱の解釈とその演奏方法について 

強弱(音量)記号とその意味

一般的な強弱記号の、一般的(と思われる)意味を記します。

強弱記号 音楽

強弱記号 音楽

ちなみに、pとfは3つまでしか繋げられないという規則はなく、作曲家の裁量でもっと多く使われることがあります。

有名なもののひとつに、チャイコフスキーの交響曲第六番、(よくバスクラリネットで代奏される)ファゴットパートにpppppp(ピアニシシシシシモ)が登場します。

音量の指示であるのはもちろんなのですが、精神性も含めての指示であるようにも思います。個人的には、あまり多く書くのはどうなのかなぁと思います。あまり種類が多くても一つ一つの意味がぼやけると思うのですよね。事細かく音量の差を指示したい心もあるのかもしれません(音楽の全部分の音量の差を示すには、確かに数が必要になります)し、そういうのが必要な音楽もあるようにも思いますが、演奏する方は混乱しないのかな?とか受け取り方が煩雑にならないかな?と思います。(現代的な志向を持つものにおいても)ある程度語法や規則が確立されている曲については、そこまでの厳密な指示は不要なのでは?と思います。語法や規則が確立されていれば、演奏する側が読み取れるはず。

この図、実はわたくしが所属する音楽団体の指導者さんが用いるものをちょっと真似して、作っております。わかりやすいんじゃないかなと思います。

 

中庸な音量の範囲は「mp,mf」で、込められる精神性についても中庸な印象。穏やかな部分に用いられることがおおいと思います。

 

明確な音量の範囲は「p,f」で、明らかな意図をもって、その音量なり音色なりを作り出す必要性があると思われます。この時点で、主張が強めだと思います。(ただし、相対的な指示である場合で、強弱記号が極めて少ない中に、これが出てきた場合には程度が大きくなる可能性もあります)

 

甚だしい音量の範囲は「ppp,pp,ff,fff」など、記号が2つ以上ついた範囲であると考えます。この指示が出てきたときには、きわめて神経を使って表現する必要があると考えます。特にp方面の指示については、「ぎりぎり綱渡り」のような音量と音色が必要とされるケースが多いと思います。

この範囲になると、精神的にも強いものを表すケースが多い印象で、場合によっては狂気とも思える表現が必要になることもあるでしょう。

ただし、これも相対的な問題で、前述のチャイコフスキーのように大量のpやfが付与された楽曲についてはその異常性が弱まる可能性もあります。

 

個人的な印象では、3つは明らかに、場合によっては2つから異常なテンションの範囲に入ると思って、使っています。

 

 

 

ニュートラルな音量指示はあるのか?

上の図を見ていただけると、中庸と示された範囲はあるものの、「完全な中庸、ニュートラルはあるのか?」と疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれません。

私の記憶する限り見たことがありませんが、もし自分が書くとしたら「mfとmpを縦に並べる」という手段を取るかなぁ…横に並べると「fp」みたいに取られるから…

しかし、自分はこの完全ニュートラルを意味する記号を書いたことがありません。必要性を感じたことがないから…だと思います。

完全なる中庸の状態ってなんだろう?と考えてみたのですが、思い浮かびませんでした。もしかしたら、fかpのどちらかに属するという先入観がもたらした結果、完全なるニュートラルという状態を考えられなくなっている可能性もあるのですが、そもそも必要だと思えない状態になっているのも確かです。

音楽はなんらかの表現をするもので、表現をしたいと思った場合に、完全にニュートラルという状態はそうそうないのかな?というのが結論です。何にも属していないのか???というようなイメージ。もちろんそういう表現もあると思いますが、積極的に用いられうるものではないのかな。と。

程度がほんのわずかであっても、大小どちらかに所属させるたいという気持ちが作り手にあるため、この記号は普及していない。というのがもしかしたら正解なのかもしれません。表現をしたいという意思と場合によっては「無」ともとられかねないニュートラルは相性が悪いのかなというのが推測です。

 

また、これは刷り込みによる個人的な考えなのですが、音量のニュートラルはmpよりmfの方が近い印象があります。音量のデフォルトはmf。

 

以下、完全なる個人的な考えなので、ふーん。くらいに思ってください。一般的な認識とは異なるかもしれません。

mfは一番気安く、楽に、おおらかに演奏できる音量記号のイメージを持っています。

これに対して、mpは「一番やさしい音楽」に付与すべき記号のイメージを持っています。もちろん、相対的な音量指示としてmpを付与すべきことも多々あります。

 

ということで、完全ニュートラルな表現はない(か、極めてまれ)であるので、音量の配分は記号+楽譜の解釈で補いましょう。というのが結論でしょうか。

だって、楽曲内に、何度もpやfが出てくる曲があると思いますが、そのどれもが同じ音量を表すのか?と問わるレバ、(その可能性は否定できないが)違う。と答えるでしょう。ということは、どちらにせよ、演奏者の解釈が必要になるのです。

 

 

一時的に変えるもの

続いて、一時的に音量を変えるアクセントに関係する記号です。

アクセント記号

アクセント記号

代表的なものを表しました。

一番一般的なのが一番左にあるdecrescendoを短く小さくしたもの。その脇の2つもアクセント記号として使われることがあります。が、違いは厳密ではありません。通常のアクセントよりも「程度が強く」だったり、「アクセントの付け方が違う」だったり、と指示されることもありますが、大差ないと考えられることもあるようです。

ここらへんは演奏者の解釈によるのではないでしょうか。

個人的には「>」を使えば済むところに、この特殊な記号をわざわざ使うときは、異なった意味を込めるでしょう。

 

右側は、文字による指示です。

読み方のイメージは…

  • [fz]:フォルツァンド
  • [sf]:スフォルツァンド、スフォルツァート
  • [sfz]:スフォルツァンド、スフォルツァート
  • [rfz]:リンフォルツァンド

違いがあるとすれば、「fzはほかのものよりも程度が一段階落ちる」と思ってください。[s]や[r]は意味を強めるために使われています。

 

傾向としては記号よりも文字で書かれたものの方が意味が強かったり、大事な音だったりすることが多いようにあります。だって書くの面倒くさいじゃん…

あくまで、傾向として、なので、最終的に奏者の裁量が大切である点は変わりません。

 

変化を指示するもの

続いて、状態を徐々に変化させるものです。

皆さんご存知の物と思います。

強弱の変化記号

強弱の変化記号

図の通りです。

左に書かれた[<]と"cresc."は起点からこの先に向かって、音量を徐々に大きくするもの。

右に書かれた[>]と"decresc.","dim"は起点からこの先に向かって、音量を徐々に小さくするもの。

です。

 

傾向としては、音量変化のスパンが長い場合は文字で、短い場合は記号で書かれることが多いですが、より表現を込めてほしい場合に記号を使う人もいます。また、途中から効果を強めるために、併記されることもあります。

 

作曲家、時代背景などで意味が変わる可能性

そもそも強勢を示す記号は五線が生まれた当初にはなかったものでした。また、チェンバロがピアノにとってかわれらたように、ピアノの鍵盤が増え音量が増していったように、楽器も時代と共に進化し、音量の差が大きくつけられるようになってきました。逆に言えば、昔の楽曲においては、そもそも音量の差を大きくつけられなかった可能性が考えられます。また、そんな楽曲が必要とされていなかった可能性もあります。

人間、刺激に慣れてしまう生き物のようで、1つの大きな刺激を経験してしまうと、次はもっと、次はもっと、もっともっと…と求めてしまう傾向があるようです。

ということで、時代と共に種類が増えてきています。(ただし、行き過ぎると食傷気味になり、種類が増えれば増えるほど、その差も小さくなり、原点に近づき、必要な情報のみ残りだすようになるでしょう。し、今も落ち着いているようにも思います。大抵は3つまでで収まるでしょう)

何がいいたいかと申しますと、楽曲や作曲者、時代によって強弱記号の意味や程度が変わる可能性があるということです。

例えば、ベートーベンはsfの代用として、fを用いていたと考えられる場面があったりします。

 

演奏上のポイント

続いて、強弱記号についての演奏上のポイントと思われる点をいくつか挙げてみます。

相対的な指示である可能性を踏まえ全体像をとらえるべし

音量の指示に限りませんが、全体を把握したうえで、計画的に配置するというのは大切です。楽曲の構成を知って表現のハイライトを意識するのも大切です。

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これと同様に音量の大小も計算したうえで演奏するべきでしょう。

音量のみならず精神性をも含む可能性も考慮すべし

fやpが単なる音量の指示にとどまらない可能性があるということです。

 

たとえば、f一つとっても、表現していることが全く異ります。

「慟哭を表すf」「後光を表すf」「広大な草原を表すf」「憎しみを表すf」「はちきれれんばかりの喜びを表すf」「生命を脅かす大嵐を表すf」etc...

pでも「息を引き取りそうなp」「しんしんと降る雪を示すp」「やさしい日の出を表すp」「張りつめた冷たい空気を表すp」「無気力を表すp」「心に秘めた深い悲しみを表すp」etc...

 

本当に、いろんな表現ができます。激しい感情を伴う表現として大音量が要求されるとは限らず、張りつめた究極の緊張感を伴うpやppによるものも当然あるのです。

 

正解は、自分の考えている物ではなく、相手に伝わった情報

たとえば、fpなど。これも、所属する音楽団体の指導者さんもおっしゃることなのですが、fとpが両方伝わるように演奏しなければならないということです。

fの時間とpの時間の両方が必要。

fと感じられないほど短い時間からpにしてはいけないという事です。

 

もう一点は、自分がfと思い演奏している、pと思い演奏していても、聞き手にそう伝わっていなければそれはfとは言えないし、pとは言えない。という事です。

例えば、指揮者からの指示で「もっとpにして」とか「全然強く聴こえない!」とか言われることがあるかと思います。自分はやってるのに…と反発心を抱く方も多いでしょう。気持ちは大変よくわかります。

 

でも、指揮者はお客さんの代弁をしていると思ってください。全体のバランスを踏まえてコメントしていますので、指揮者が足りないと言ったら、足りないのです。

 

cresc.dim.のかけ始める位置に注意

これは、合奏などをしていると、本当によーくみられる現象です。例えば"cresc."の文字が見えたとたんに一段階大きくなってしまう。"dim."の文字が見えたとたんに一段階小さくなってしまう。

これ、絶対NGです。

徐々に変化させる記号は見えた地点から開始するべきなので、その時点では音量は変化させてはいけないか、場合によっては、一度逆方向に持って行くくらいのつもりでないといけません。

逆方向へ持って行くというのはたとえば、"cresc."が見えた場合、一度弱くしてから徐々に大きくしていく。などです。これをやってはいけないケースもありますので、注意してくださいね。 

開始時点でいきなり大きくしてしまうとそもそも「徐々に変化させる」ということが難しくなってしまいますし、効果が半減してしまいます。

これは、常々気を付けるようにしましょう。

 

音量を減少させる表現こそ、意図的に

cresc.やf方面の変換は特に何も言わずともその効果が表れやすかったりします。誤解を恐れずに言えば能動的な方面の変化と言えるからです。

これに対して、pやdim.など音量を減少させる方面の表現については、より注意が必要です。というのも、無気力な、受動的な印象を与えがちであるからです。そういう表現が求められているわけではないかもしれません。その点を見分けることが大切です。

 

pの演奏というものは、fよりも却って神経を使い、難しいものであることも多いのです。

 

cresc.は終わりにも注意

dim.ではあまり問題になることはありませんが、cresc.については、終わりを失敗して台無しにするという事が、頻出いたします。

どういったことかと申しますと、cresc.の最後で音量が落ちてしまう問題です。

では、イメージ図で説明いたします。

 

1.理想形

到達点までcresc.したまま到達する形。

理想的なcresc.

理想的なcresc.

 理想形です。これで目標の音量まで到達できれば完璧なcresc.の効果が期待できます。

管楽器奏者は言わずもがなですが、上手な打楽器奏者のロールはこの形を描きます。

 

2.次点、ブレスが入る

これもありです。隙間が限りなく小さければ、1.に劣らず効果があります。ポイントはブレスを取る直前までcresc.しているということ。

cresc.次点

cresc.次点

隙間が一瞬であり、かつ直前までcresc.してあれば、cresc.したまま到達したように聞こえます。

 

3.あまり良くない例 隙間が大きい

一瞬の定義は人それぞれでしょうが、隙間が大きくなればなるほど、cresc.の効果は減ってしまいます。

cresc.あまり良くない例

cresc.あまり良くない例

想像に難くないでしょう。隙間が多いと、間延びしてしまうのですよね。ただし、これでも最悪のパターンではありません。隙間の直前までcresc.をし続けているのがポイントです。

 

4.cresc.の意味がない最悪のパターン

最悪のパターンですが、よーく聴かれるパターンでもあります。

本当に残念極まりないものです。

cresc.の意味のない最悪のパターン

cresc.の意味のない最悪のパターン

cresc.の最後で力尽きて、音量が落ちてしまって、ブレスを取るというパターンです。この何が最悪かと申しますと、最後に音量が落ちてしまうことによって、勢いが落ちる印象がついてしまうのです、せっかく直前まで頑張ってcresc.しても、最後で音量も勢いも落ちてしまうと、dim.しているように聞こえてしまいます。

cresc.はcresc.したまま到達するのが第一目的です。

cresc.の音量の幅がどんなにあろうとも、最後に音量が落ちて勢いが落ちてしまったら、それまでの努力が水の泡です

こうなるくらいならばcresc.しなくてもいいくらい、意味がありません。

 

 

dim.もですが、cresc.はくれぐれも計画的に!

 

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