POPSにも果敢にチャレンジ!クラシック作編曲家 田丸和弥の音楽日記

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本当は種類が一杯!? 音部記号と移調譜の話 前編

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音部記号?と言われて、ピンとくる人はどれほどいるのでしょうか?五線の左端にある「アイツ」です。

 

本当は種類が一杯!? 音部記号の話と移調譜について

音部記号とは?五線上のランドマークである

音部記号とは五線の一番左端にある記号(後述のト音記号、ヘ音記号etc...)のことを指すのですが、この役目はいったい何なのでしょうか?

五線上のランドマークの1つとみなすことができるでしょう。音部記号は五線上に配置された音符の、音の高さを定めるものです。

例えば、第三線に配置された音はなんでしょうか?という問いに答えられますか?

「シ」と答えたら、何文の一の確率で当たるでしょう。でも、この情報だけでは、絶対に当てるということは不可能です。

ただし、この問いの先頭に以下の文言を付け加えれば、100%回答することができます。

  • ト音記号(treble cref)が書かれた

そうなんです、音部記号はそれだけでは、ただの5つの線に過ぎない五線に音の高さの指標を与えるものなのです。

 

では、次で細かく見ていきましょう。

ト音記号

ト音記号(トレブルクレフ)

ト音記号(トレブルクレフ)

この記号はみなさんご存じの事と思います。「ト音記号」ですね。ト音記号の由来は、ト音記号の書き始め(この図においては、第二線)に配置された音を「ト(G)」と定める、というルールから名づけられたものです。厳密には「G4」

この譜表を使う主な楽器、ピアノの高音域(右手のデフォルト記号と言ってもいいかも)、ハープの高音域、ヴァイオリン、フルート、オーボエ、クラリネット族、サックス族、トランペット、ホルン、トロンボーン(金管バンド)、ユーフォニアム、チューバ(金管バンド)、ギター、シロフォン、グロッケン、ビブラフォン、ソプラノ(歌)、アルト(歌)etc...などです。

極めて多くの楽器に使われる記号で、時にヴィオラやチェロの高音域のために使われることさえあります。

 

この記号にいくつか派生形がありますが、比較的多く使われるものをご紹介します。

ト音記号(低音)

ト音記号(低音)

上の記号と見比べてもらえると何が違うかわかるかと思います。こちらの記号にはト音記号の下に「8」が書かれてますね?これは、"8va bassa"の意味が付け加えられたト音記号で、表記より一オクターブ低い音を演奏します。ちなみに、上に8がつくものもありそれは"8va"がついたものと同等です。

男声のテノールの譜面に使われたりします。「なぜ、ヘ音記号がつかわれないのか?」と言われますと、おそらく理由は「読みづらくなるから」でしょう。

テナーパートはヘ音記号の上加線の音域が多く使われる割に、ヘ音記号の第一間や第二線の当たりは出てきません。この点、ト音記号に"8va bassa"を付けたものを使うと、ほぼすべて5線の中に納まってしまいます。

こういった理由により、ト音記号の下に8がついた記号が使われるようになったと考えられます。

 

ヘ音記号

ヘ音記号(bass clef)

ヘ音記号(bass clef)

こちら、ト音記号に続いてよく見る記号ではないでしょうか?ヘ音記号ですね。これもト音記号と由来は同じで、記号の書きはじめ(ポッチ2つの間)の音を「へ」「F」と定めたため、ヘ音記号と呼ばれています。厳密には「F3」

ヘ音記号がつかわれる楽器は、ピアノの低音域(左手のデフォルト)、ハープの低音、チェロ、コントラバス、ファゴット、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバ、ベース、ドラムセットなど。ホルンの低音域で使われることもあり、ト音記号ほどではないにしても、多くの楽器で使われています。

ピアノの譜面に使われる大譜表のセットにはト音記号とヘ音記号が並んで使われますよね。

大譜表

大譜表

ト音記号とヘ音記号がメジャーになったのは、鍵盤楽器が台頭してきたことが理由であると推測されます。

と言いますのも、この二つの記号を使うと、広い音域がカバーできるからなんですね。

この二つの関係は中央ドを中心にこのようになっています。

このようにト音記号の下第一線、ヘ音記号の上第一線を同一の「ド」と設定して、上にも下にも広く音符を配置できるようになっています。

 

さて、音部記号はこれだけではありません。

 

この後、解説するハ音記号は「中央C」を基準にした音部記号で、ト音記号とヘ音記号の間の音域をカバーするものです。

ハ音記号

「中央C」を基準にした音部記号ハ音記号について、現代においては2つの記号が良く使われています。

アルト記号

アルト記号

アルト記号

現代における、ハ音記号の一番標準的な記号ではないでしょうか?ヴィオラの標準的な音部記号になっているため、オーケストラのスコアに出てこないことはまずありません。しかし、吹奏楽のスコアで見ることは極めてまれかもしれません…

ここまでで想像つくと思いますが、命名の由来はこの記号の中央が「ハ」「C」音であるため、ハ音記号と呼ばれます。アルト記号と言うのは、ハ音記号の中のさらに細分化された1種類を指す記号です。

 

この記号がつかわれるケースは、ヴィオラ、アルトトロンボーン、(テナー)トロンボーン(稀)などです。

ハ音記号しか読めない人がいる!? アマチュアヴィオラ奏者あるある

ウソのような本当の話、楽器を本格的に始めるきっかけが、例えば大学オーケストラで、担当パートがヴィオラだったりすると、常々読まなければならない音部記号がこれになるわけです。一番親しい音部記号がアルト記号…そのために、「アルト記号が読めるのにト音記号が読めない」なんて人が出てきてしまったりします。筆者の友人にもいたりするので、ウソのような本当のお話です。

汎用性低っ… ちょっとかわいそうかも…なんて思っちゃいます。

テノール記号

さて、「アルト記号はハ音記号の一種である」という話をしました、「一種である」ということは「他にもある」ということになりますね。

はい、吹奏楽ではこっちの方が目にする可能性が高いかも?

テノール記号

テノール記号

「アルト記号と何が違うの?」と言われますと「C」の位置が違います。アルト記号は第三線を中央に書かれていました。それに対して、このテノール記号は第四線を中央に書かれています。

たったこれだけの違いなんですね。アルト記号より3度低い音部記号となっております。

たったこれだけの違いとは言っておきながら、読譜はまるで別。難しいんです…たとえば、アルト記号で折角おぼえた「ドレミ」が使えないんですよ。「線1つ分ずらして考えればいいんだよ」なんて「言うは易く行うは難し」です。時折器用な方いらっしゃいますが…なんでこんな面倒なことしているんだろう…なんて思ったりします。でも、オーケストラのスコアをずっと眺めていると身についたりもしますが、それでも私はアルト記号の読譜が苦手です…

ただ、この「面倒くさい」という感覚の結果起きたと思われる現象が、実際に起きておりまして、それについては、後述してみようかと思います。

 

さて、この記号がつかわれるのはどんなケースがあるのか?

オーケストラのテノールトロンボーンパートはデフォルトでこれが使われることが多いです。また、ファゴットとチェロの高音の表記にも使われます。

吹奏楽でも、オーケストラアレンジもののトロンボーンや、ファゴットパートの高音域で使われているのを見ることができるかもしれません。

 

実は1種類ではない、ト音記号とヘ音記号 ついでにハ音記号

さて、先ほどハ音記号の中に「アルト記号」と「テノール記号」があると申し上げました。「あれ?これ合唱のパートに似てない?」そうなんです。アルト記号、テノール記号があるということは、「ソプラノ記号」や「バス記号(ちなみに、ヘ音記号の事です)」もあるという事になります。

 

 楽譜浄書ソフト「Finale」

これに標準で搭載されているものだけで、こんだけあります。

 

かわった音部記号

かわった音部記号

これ、書き間違えたわけではないんです。それぞれ名前もついております。名前についてはこちらをご参照くださいませ。

ja.wikipedia.org

 

Finaleに標準搭載されていない(多分作れるはず)記号についても解説されています。

 

基本的な音部記号がト音記号とヘ音記号に集約されていった理由

さて、ここまでで実は音部記号がたくさんあるのがわかったでしょうか?でもなぜ、現代においては、ト音記号とヘ音記号、一部のハ音記号に集約されていったのでしょうか?

1つの理由は先述した標準のト音記号と標準のヘ音記号が合理的でかつ広い音域がカバーできるから。でしょう。

もう一つは、音部記号が大量にあると総譜の読譜がとても面倒くさい…ということが挙げられると思います。

 

たとえば、第一線が「ド」のものと「ミ」のものと「ソ」のもの「シ」のもの「ファ」のもの…なんてものが全部ごっちゃになっていたら…今一体なんの和音を奏でているのか?即座に解釈するのは難しいでしょう。

使われる音部記号が限定されていれば、このような不都合は起きないですよね。

という理由により、音部記号が淘汰されていったと考えられます。

 

では、淘汰されていった音部記号に合理性はなかったのか?と問われると、いやそんなことはないでしょう。

例えば、合唱のテノールパートをヘ音記号で書くよりもト音記号の"8va bassa"で書いたほうが加線が減るという話を書きましたが、これと同じ理由により、パート譜の読譜は容易であった可能性があります。

例えば、今もヴィオラで使われているアルト記号ですが、これを仮にト音記号に変えてみたとしましょう。この場合ヴィオラの最低音Cは下第五間(4つの加線のさらに下にある間)となりまして、パッと見、何の音か判別が難しいでしょう。しかしハ音記号であれば、下第2間(1つの加線のさらに下にある間)となり、読譜がとても容易になります。一説によると、加線3つ以上になると、読譜に時間がかかりやすくなるそうです。フルートや1stヴァイオリンの奏者などは、そんなのばんばん出てきますし、慣れの問題はあるでしょう。

とこれと同様の理由により加線を減らせることにより、読譜を容易にできたという可能性があります。

 

スコア(または、複数の楽器の楽譜を読む必要がある場合)の読譜と、パート譜の読譜の利害が衝突した結果、スコアの方に軍配が上がっていった…という形になるのでしょうか。

 

その結果、折衷案として、"8va basa"つきト音記号のようなものが生まれてきた…とも考えられます。

 

さて、音部記号の話でした。

 

移調譜とは? 続きを待たれよ…

 

実は移調譜の話も書きたかったのですが、ここまでで、かなーりのボリュームになってしまいましたので、本記事の後編にて詳しく触れてみようと思います。

 

ラインナップはこんな感じを予定しております。

  • 移調譜とは
  • 基本的なin Bb、in F、in Eb
  • 時々出てくる、しかし標準の1つかな?私は苦手、in A
  • 古い曲にはin E、in G、in Dなんてものも
  • +8va、+8va bassa
  • 編成に応じて変わる移調譜
  • 英国式金管バンドでは、Bass Trombone以外すべてト音記号の移調譜で書く
  • 奏者の合理性を追求したもの。
  • スコアも移調譜で書かれている合理性とは?

 

後編はこちら

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 関連記事について

五線をずらして読む…というところに、この音部記号に関連するテクニックがあるかも。音部記号マスターは楽にできちゃうのかな…

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トリルのお話

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