本日はとうとう全音ピアノピースの最高難度であるF難度の楽曲の解析にチャレンジしてみたいと思います。ピアノを弾く人であれば、一度は弾いてみたい曲ではないでしょうか?
ショパンの英雄ポロネーズを解説・解析(アナリーゼ)してみる ピアノ 弾き方
演奏の参考や、「へー」的な視点をお届けできればと思っております。あくまで、私の個人的見解ですので、「私はこうは思わない」というのも大変結構だと思います。考えてみることが大切です!
基本情報(拍子、調性、構成など)
4分の3拍子、変イ長調、テンポ。三部形式の楽曲です。といいつつ、再現部が主題1回なだけであり、主部は確保を含め主題が三回、主部の中間部にあたる部分もあり、主部だけで三部形式を構成しておりますし、中間部も大きく3つの部分から構成されており、単純な三部形式とは一線を画した長大な楽曲となっています。
三部形式の内訳はこのような形です。
序奏、主部(A-A'-B-A')、中間部(C-C-D-E)、再現(A')、コーダ
小節で当てはめてみましょう。
- 序奏:1-16
- 主部(A):17-32
- 主部(A'):33-48
- 主部(B):49-64
- 主部(A'):65-80
- 中間部(C):81-101
- 中間部(C):102-122(121)
- 中間部(D):123(122)-130
- 中間部(E):131-156
- 再現部(A'):157-172
- コーダ:173-184
ポロネーズの常識を覆す曲である
さて、久しぶりに譜面をよーく見て気づいたことがありますので、最初にそれを述べ部見ようかと思います。ポロネーズの要件ともいえる大切な1点がこの曲においては
女性終止でない?
さて、ポロネーズとは通常女性終止の楽曲であります。
女性終止というのは、弱拍(1拍目以外)で終わるものを指します。
以下の図は軍隊ポロネーズの終わりを示したものです。
3拍目で終わっていますね。こういった1拍目以外で終わるものを女性終止と言います。
それに対して男性終止というのもあります。これは女性終止の逆なので、1拍目で終わるものを指します。
木枯らしのエチュードの終止は男性終止です。
ちなみに、「1拍目で終わる」の意味合いですが、これは最後の音が小節の頭で発音されることを意味します。
なので、例えば全音符の男性終止の曲なんてものももちろんあります。
さて、ここまでお話したら、勘のいいあなたは、お気づきかと思いますが、英雄ポロネーズの最後はこうなっております。
はい、なんと見事な男性終止なのでしょうか。
なぜ、女性終止ではないのか?
なぜ、こういう形にしたのか?おそらく、「男声終止の断言して終わる形を取りたかった。そのためには、ポロネーズの要件ではあるが、例外を取ろう」と考えたのではないか?と推測されます。ショパン自身が「英雄」と名付けたわけではないのですが、このポロネーズにはそういった力強さを持たせたいと考えたため、このような形を取ったのではないでしょうか?
ちなみに、もしこれを通常の終止にするとしたら?と考えてみました。
おそらくこうなるでしょう。
ポロネーズの典型的なリズム「ズンタタ、タッタッ、ズンタッ」というものがあります。
女声終止にしてみると、終わりから2つ前がこの形になりますよね?なので、もしかしたら、もともとは下の形を採用しようとしたのではないかと推測されます。ただ、この曲の雰囲気に即した、威風堂々、荘厳な終わりにしよう…とすると、ちょっとせわしない。とってつけたような感じがする。いうことで4分音符1つ分挟んでこの形になったのではないかと推測されます。
いえ、やはりポロネーズの要件を満たしていました
ちなみに、「女性終止が要件として定義されているのに男性終止ではポロネーズとは言えないのではないか?」と思われるかもしれませんが、実は要件を満たしている箇所がありますのでご紹介いたします。その箇所というのは主部の終止です。
ご注目ください。
はい、これは典型的なポロネーズの終止と言えるでしょう。このように本編では、女性終止を用いてポロネーズの要件を満たしていると考えられます。
調性について
曲が長大であることもあり、様々な調性をいったりきたりしています。
私も、もう各部解説の記事を書くときにはちゃんと調判定してみます…
まず、前奏が転調まみれで難しいです…
2023/02/13 追記
そろそろ書かねばと思い、よく読んでみましたところ、序奏は交響曲の展開部最後から再現部へのカタルシスを呼び起こす可能ような、長大なドミナントモーションを形成している(正確には主部の最初の変イ長調の和音までを含めてドミナントモーションであるため、ドミナントモーションのうちのドミナントの部分を延々とやっている)との結論に至りました。
簡単なエピソードを挟む度に途切れるとは言え、ベースでずっと鳴っているのは主調の変イ長調(A♭)に対する属音である変ホ音(E♭)であり、序奏の間中、ベースには、(不完全ではあるが)属音の保続音が鳴っていると解釈するのが良いかと思われます。
なお、もちろんですが、より興味深くするために、属音の保続音の上では、和声が目まぐるしく変わっていっている(Eb major→Ab minor →E major(AbとG#を利用した転調)→ Bb major → Eb major →Ab major...かな…?最初がAbかEbかちょっと難しいですが…)という事実も記載いたします。
具体的には、序奏部の解説(近日公開予定。。。がんばります)をご参照ください。
続く主部は主調の変イ長調(♭4つ)で比較的落ち着いております。主題が落ち着いてないと何がなんだかわからなくなってしまいますからね…ってそういう曲ももちろんありますが…
主部は落ち着いているものの、主部の中間部とでも申しましょうか、比較的大きな部分である主部(B)は調性が安定せず、ハ長調→変ホ長調→へ短調(平行調)と変わっていきます。主部(A')の変イ長調への戻り方は、Bbm→Bb7→Eb7→Abといった形です。へ短調のIVの和音の三音を半音上げて、変イ長調のドッペルドミナントにし、その後ドミナントモーションを使うと言う感じです。
中間部は遠隔調のホ長調→変ホ長調を2回繰り返し。ブリッジへ。
ブリッジ前半はめまぐるしい転調があり、ト長調に落ち着きます。その後ト短調→変ロ短調→へ短調と来て、再度変イ長調に戻ります。
調判定は結構難しいのですれけれども、調性がわかっていると、今弾いている音が何の役割の音かわかる(調が判定できれば階名がわかる。階名がわかれば各音の役割がわかるようになる(ドは主音、ソは属音といったようなものがわかる)ようになり、表現付に役立つこと間違いないでしょう。
各部解析
こちら、数回に分けて書く予定でございます。
本日はごめんなさい。
Coming Soon.
楽譜の入手方法
超有名曲だけあって、全音ピアノピースにももちろんあります。
難易度はA~Fのうち、一番難しいF。
F設定も納得の楽曲です。
ピアノピースー291 英雄ポロネーズ/ショパン (MUSIC FOR PIANO)
- 出版社/メーカー: 全音楽譜出版社
- 発売日: 1998/12/10
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おまけ動画
英雄ポロネーズと聞いてピントこなくとも、曲を聞けば「あー!」となる曲ではないでしょうか。
すごい、これくらい弾けたら楽しいだろうな…