久しぶりに自作関連の記事をアップしてみます。大学オーケストラの後輩たちのために作ったオリジナル作品です。
変わった編成の木管八重奏「セレナード第四番」
演奏動画
多摩木管アンサンブル 第23回 定期演奏会にて初演されました。お茶の水管弦楽団の木管セクションの演奏会である「TeaWood」においても1,4,5楽章が演奏されたことがございます。
さて、まずは演奏をお聴きください。未編集動画ゆえ、音が少し粗いかもしれません。
第一楽章「ボレロ」
第二楽章「バルカロール」
第三楽章「タランテラ」
第四楽章
ワルツの楽曲。河原で体育座りしている曲と形容された曲。
第五楽章「スコチナー」
基本データ 5つのダンスからなる楽曲
5つの楽章からなる組曲で、5つの異なったダンスを扱った曲です。
- 第一楽章「ボレロ」
- 第二楽章「バルカロール(舟歌)」
- 第三楽章「タランテラ」
- 第四楽章「ワルツ」
- 第五楽章「スコチナー」チェコの舞曲
となっています。
この曲の調性配置は変ホ長調を基準に、長3度の関係で構成されています。具体的に言うと、第一楽章「変ホ長調(♭3つ)」→第二楽章は長三度下の「ロ長調(♯5つ)」→第四楽章はさらに長三度下の「ト長調(♯1つ)」→第五楽章はさらに長三度下かつ主調の「変ホ長調」となっております。第三楽章に関しましては、主調の平行調である「ハ短調(♭3つ)」を採用しています。
第一楽章「ボレロ」
変ホ長調、4分の3拍子、アレグロ・モデラート。スペイン舞曲のボレロの楽曲です。展開部のごく小さいソナタ形式の楽曲です。
第二楽章「バルカロール」
ロ長調、8分の6拍子、アンダンテ。バルカロールは日本語では「舟歌」と言われています。8分の6拍子や8分の12拍子で波の揺れを表すような伴奏形が使われることが多いです。
ちょっと変わったところですと、チャイコフスキーの舟歌は4分の4拍子です。
第三楽章「タランテラ」
8分の6拍子、ハ短調、テンポ・ディ・タランテラ。複合三部形式の楽曲です。イタリアの舞曲タランテラの楽曲です。タランテラの由来は諸説ありまして、タラント地方発祥の舞曲だから、とか、タランチュラにかまれた毒を中和するために高速で踊る必要があったからetc...です。
主部の真ん中あたりにあらわれるファゴットの3連符による連符はチャイコフスキーの交響曲第六番「悲愴」からヒントを得ました。悲愴の第三楽章はタランテラと行進曲の融合した楽曲です。
この曲は短調による深刻なものですが、こんなほんわかしたタランテラもあったりします。
第四楽章「ワルツ」
4分の3拍子、ト長調、テンポ・ディ・バルス。ワルツの楽曲です。動画のところにも書いてありますが、「河原で体育座りをして黄昏ているような曲」とコメントをいただきました。
合っているような気もします。
この曲を低音を極力排除しており、浮遊感のある響きになっていると思います。フルートのタンギングによる下降音形の箇所は雪がちらちら降っているイメージで書いています。
私には、フルートから連想されるイメージの一つに雪があります。
第五楽章「スコチナー」
変ホ長調、4分の2拍子、アレグロ・ヴィーヴォ。複合三部形式の楽曲。「スコチナー」とはチェコの伝統舞踊です。
チェコの伝統舞踊が好きで、自作においても、ちょくちょく使っております。
スコチナーとはこんな楽曲です。
ドヴォルザークのスラブ舞曲 第五番
この動画の20'43’’あたりから始まる音楽がそうです。
ホップ、ステップ、ジャーンプというリズムが特徴のリズミックなダンスです。
奏者たちには、やっと普通の拍子(?)が来たと言われました(笑)。2拍子とか4拍子の事のようです。これまで4分の3拍子と8分の6拍子しかなかったもので…
編成の内訳は?3Fl,3Cl,2Bn!?
通常木管八重奏というと古典的なもので言えば、Fl,Ob,2Cl,2Hr,2Bnか2Ob,2Cl,2Hr,2Bnが多いのですが、この編成にはオーボエもホルンも含まれません。
3本のフルート(3番はピッコロ持ち替え)と3本のクラリネット(3rdはバスクラ持ち替え)、2本のファゴットという変則的な編成なのです。
この編成はオーダーメイドで作った楽曲故、だったりしますが、音域が広く、3系統の楽器しか使ってはいませんが、特殊管を含めると案外音色要素も多く、案外面白い曲になっているのかもしれない…と思っています。
通常、木管アンサンブルの楽曲だと、ファゴットには、ほとんどのベースの役割があてがわれ、その負担が大きくなりがちなのですが、バスクラリネットが入ることで大分その負担が軽減されたようです。ファゴット奏者たちが言っておりました。
変わった編成ゆえに、需要は?ですが(というか、ファゴット2本そろえるハードルが案外高いような気がします(ファゴット2本と同時にフルート3本というのもまたね…)が、珍しくて注目されるかもしれません。
難易度
楽章によって異なるのはもちろんですが、この曲はかなり高い部類に入ると思います。特に第五楽章は難しいようです。当時、後輩たちがプロファゴット奏者のトレーナーの先生に見ていただいたようなのですが、結構難しいとおっしゃっていたそうです。
第四楽章においては、(特にファゴットに)高い音域が使われることを除けば、比較的平易かと思います。
第四楽章においては、高いCの音がフルートとユニゾンで出てきます。
0'35''あたりの旋律をお聴きください。フルートとファゴットのユニゾンはこんな音になります。
上記、吹奏楽におけるファゴットという記事でも触れていますが、とても魅力的な音色要素だと思います。(でも、多分ファゴットは演奏していて苦しい…)
残りの楽章は甲乙つけがたく難易度高めであると考えられます。難易度の方向性はことなるかもしれません。
ひたすらインテンポで進む第三楽章は技術レベルが高ければ現実的かもしれません。第一楽章もこれに続くでしょう。
第二楽章はシャープが多いゆえの読譜の大変さに加え、アゴーギクをそろえるのが大変でしょう。
第五楽章は16分音符の動きが難しいと思います。再現の前にあらわれる一時的にロ長調になる部分が鬼門です。
アンコンでつかえるか?使えます!
この変わった編成を準備できさえすれば、この曲でアンコンに出場することはできます。技巧的な箇所を聴かせることもできるでしょうし、歌う箇所で魅了することもできるでしょう。編成の珍しさは目を引くでしょう!
この曲での出場を、検討してみてはいかがでしょうか!?
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